おれと日本酒と大五郎(大五郎は関係ない)

 おれは基本的にとっかえひっかえの人間であって、日用品だの食べ物だの、できるだけ前と違うものを買うくせがある。よほど風邪をひくでもないかぎり毎晩摂取しているアルコールについても、銘柄どころか酒の種類もとくに決まっていない。種類によっては飲み終えるまえに次のを買うので(酒に弱いので「焼酎を一晩で一本開けた」とかはぜったいに無理)、部屋の中には中途半端に中身の入った酒瓶がごろごろしている。今見回してみれば、シングルモルトウィスキーが2本(ラフロイグ、宮城峡)、ブレンデッドウィスキー(ブラックニッカ)、チンザノ・ロッソ、バカルディ電気ブラン、ジン(シュリヒテ・シュタインヘーガー……なんだこれ?)、紹興老酒、ビール、発泡酒、第3のビール、紙パックのワイン、そして、ワンカップ大関純米酒「曙光」。
 おれが最高に好きなのはどう考えてもシングルモルトのスコッチで、スコッチのなにが違うかといえば味でも香りでもなく「酔い」が違うのであって、俺にもなんとか買えるくらいのものであってもその違いは歴然としていて、「今日は自分へのご褒美」とかいうふざけた心持ちのときにしか飲まないくらいだ(なので減らない)。けれど、今日は日本酒の話をしよう。

 日本酒の売上が、えらく落ちているという。若者が日本酒離れしているなどとも言われている。おれ個人の印象というか体験からいえば、そりゃそうだろうという気はする。なにせ、安い日本酒は悪酔いするからだ。なんかベトベトしてて甘ったるくて変な匂いがして、そのうえ頭も痛くなる。ただ、純米酒と名がつくものならば、味が楽しめるかどうかは別として、そんなに悪酔いはしない。……と、あくまで俺の体質からは、そうなのだ。もちろん、これと同じようなことは、たとえば上の記事のコメント欄にも書いてあって、ほとんど一般論なのかもしれない。ただ、おれにとってはおれの酔いの実感であって、ほかにそういう人がいてもおかしくはないと思う。そして、醸造アルコールや調味料、酸味料、そんなものが悪酔いというものにたいして、どういう機序で作用するかはしらんが、まあそういう面もあるのだろうか、などと思う。
 しかしまあともかく、酒の飲める歳になって、さあこれからというやつはおおよそ金がないものだし、入り口はそういう日本酒(もどき)みたいなものになるわけであって、それであんまりいい体験しなかったら、飲み続けることはないと思う。おれは移り気な性格だから「純米酒は酔わない」と勝手に見分けて、たまにスーパーで買えるていどのを買う、冬には少し頻度が高くなるくらいのつきあいにはなったけれども、それほど愛してるわけでもない。だいたい、コストパフォーマンスからいえば、開けてしまったら飲み切るしかないビールやチューハイについで、ワインや日本酒というのも早めに飲みきらなければいかんようで、どうもよくない。度数も15度前後くらい。それにくらべると、やっぱりハードリカーのほうが、サッとたくさんのアルコールを摂取できて、後腐れもないし、うまい。コストパフォーマンスがいい。

 というわけで、日本酒業界みたいなものがあるなら、入り口の安くてしょうもない酒をどうにかするしか、今後日本市場で生き残っていくことはできないんじゃないかとか思う。余計なお世話かもしれないが。というか、ほとんど貧乏人の下から目線しか持たないおれ(この日記の初期の方に、「若者が安い発泡酒なんか飲むから酒文化が云々」言ってたジジイを悪罵してるエントリーがあるはず。その刃は今のおれにも向いているだろう)がこんなことを言うのはおかしいが。
 いや、なんだ、実のところ、この記事を読んだあと、こないだの土曜日だ、たまたま歩いたあたりに熊澤酒造とかいうのがあって、日本酒買ったり、その晩にチェーン居酒屋で純米吟醸の獺祭だったかを飲んだりしたからだ。それで、とくにその獺祭、チェーン居酒屋で日本酒とか飲んだことなかったけど、これいいじゃん、と。これで十二分にいい。ちびちびやれるしさ。おれはほんらい早食い早飲みなんだけど、はまちのかま焼きとかつついてちびちびとかだと、時間つぶれるというか、コストパフォーマンスいいじゃん。それで酔いも悪くないし。
 まあ、そんなんがあったんで、なんかこの、安くて悪かろうであろう酒と、超高級酒に二分化されたら面白くねえし、そのあたり、まあ、なんだ、なんかちょっと日本酒買うからとか、そんなふうに思ったのだった。つーか、前にジャーマンビアホールで飲んだときに、ドイツ人マダムが言ってたけど、ドイツじゃビールの製法はもとより、量をごまかさないためにビアジョッキに目盛りが刻んであるんだぜ。たしか、法律で。いや、確かめてないけど。少なくとも、ビールはこのようなものである、という決まりがあるはず。スコッチとかにしても同じだろう。ところが、日本は酒税法みてな区分だけで野放し。それで、酒税のためにメーカーが心血注いで安いビールもどき作ってるんだろうけれども、そのあたり無駄じゃねえのと。ひょっとして、そんなんなかったら、もっとマシなものをすごく安くはなくとも手に入れられるようになってたんじゃねえの、みたいに思うのだけれども。

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