I'm a loser baby, so why don't you kill me?

 騒音の悩みについて、昨日あらためていろいろなサイトなどを見てみた。結果として、これはかなり難しい問題のようだ。音を感じるというのは実に個人的な差異が多く、立証が困難だ。時には必要以上に神経質な人が、普通の生活音を出す人に因縁をつけるという例だってある。自分の場合もそのケースを考慮に入れ、あえて日記に書いて自分を客観視しようと努めてきたわけだ。その結果、やはり隣の騒音は自分の普通の生活と睡眠を害するものと判断し、大家さんに相談するなどしてきてたつもりである。
 しかし、そんな中で目を覚ますような一文を見つけたのだ。「隣の音が気になるような奴は、一戸建て買って暮らせ」と。
 そうだった、俺は何を考えていたのだろう。俺が住んでいるのは、横浜中華街に歩いていけるわりに、無茶苦茶静かな恵まれた環境だ。しかし、たかが家賃四万五千円のワンルームアパートだ。ワンルームアパートに暮らさざるをえないような奴は、社会にとって不要な存在、いわばゴミ虫みたいなものだ。大家にとっては幾分ましで、収入の元になる家畜みたいなものだろうが、それが殺し合って個体数が減らなければいいくらいのもので、牛や豚や鶏の住環境に気を使う理由もない。
 そんな家畜が自分の正当性を確かなものにしようと気を使うなんて、我ながら滑稽すぎる。豚が隣の豚といがみ合った場合、理屈も筋もいらない。強い方が威張る、弱い方は身をすくめる。それだけの話だ。それに気がついた俺は、なんだか心がパーッと晴れたようになった。次に騒音を出したら、直接かち込んで、こっちが負けたらそれまでだ、と。幸いにも隣人の咳こむ声は収まらず、最近は喘ぐような唸り声も聞こえてくる。弱っているところを狙うのは、野生生物も家畜も一緒だ。もしも相手が喧嘩慣れしているような奴だとしても、こちらが×××を○○にねじ込むくらいのチャンスはあるかもしれない。俺は晴れ晴れとした気持ちで帰宅した。
 ……が、昨夜は静かだった。静かすぎるほど静かだった。隣人は確かに部屋にいた。俺が帰宅するとき、ユニットバスから咳と唸るような声が聞こえてきたのは確かだ。俺は俺で、熱を測ってみると三十七度三分ほどあった。バファリンソラナックスを飲んで、十時過ぎには寝てしまった。朝も気持ちよく目覚めた。何か俺は、まだ失う物があるんじゃないかとやにわに思いはじめてしまった。俺は春も朝も嫌いだ。