『女のエピソード』澁澤龍彦

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長島茂雄氏みたいな言い方をすれば、女のエピソードは永遠に不滅なのである。

 桜木町ぴおシティ一階の古本屋(前からあったっけ?)で購入。上のAmazonのリンク先は河出文庫のものだが、自分が購入したのは大和文庫から出た昔のバージョン。本文はマゼンタ・カラーで、全てのページが飾り罫で囲まれている凝ったデザイン。元は資生堂のPR誌に掲載されていたもので、古今東西さまざまな女性のエピソードを、実に簡単にわかりやすく書いている。ものすごく読みやすい。ここらへんの文章の密度を変える腕前は見事なもので、売文業における澁澤大兄の腕前には唸らされるばかりだ。しかし、かといって、こういう本がウソの澁澤で、本当の澁澤は難解な方、などというわけでは決してなく、実像など霧の向こう、犬に喰わせておけ、といったところか。
 エピソードの方に触れておくならば、一人ベアトリーチェ・チェンチ。ローマ貴族の娘だが、十四歳で実の父親に監禁され、強姦され、その復讐に父を殺す。その罪で、十六歳で自らも断頭台(ギロチンではない)の露に消えた美少女。ふーむ、肖像画と伝えられる絵を見ても、確かにこれは何か惹きつけられるものがある。
 ところで、上の引用部分は文庫版のあとがきの締め。澁澤龍彦長島茂雄の文言を引き合いに出すなんて、とても珍しいような気がした。野球については、戦前の六大学野球の思い出について書いていたような気もするが、この取り合わせには違和感があってちょっと面白い。