もう夏も終わるのか

 八月の十五日のちょっと前あたり、テレビの天気予報でアナウンサーが「ひきつづき残暑が……」というような表現を使った。それを聞いた俺は何やら背筋が寒くなった。白い紙に落ちた一点の染みのような感じ。紛れもなく、それを聞いた俺は小学生のころに戻っていた。「夏休みが終わってしまう!」。一ヶ月に、さらに十日あまりのボーナスまで付いた、尽きることのないお休み。それが、終わる。九月の足音が聞こえる。まだ一ヶ月残ってる、まだ半月残ってる、まだ一週間残ってる、宿題も残ってる……。
 なあ、夏休みの宿題なんていっさいなくしちまえよ。心底遊ばせてやれ。あんな宿題くらいでそんなに学力は左右されないさ。そうじゃなかったら、夏休みなんていっさいなくしちまえ。