『境界の発生』赤坂憲雄 ◆その1◆

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◆その1◆

 かつて境界とは眼に見え、手で触れることのできる、疑う余地のない自明なものだと信じられていた。しかし、わたしたちの時代には、もはやあらゆる境界の自明性が喪われたようにみえる。境界が溶けていく時代、わたしたちの生の現場をそう名付けてもよい。

 私がこの日記で書き連ねていることは、全て内と外の話である。私は境界の話以外は何もしたくないし、しているつもりもない。ゆえに、日記の識別表記は「関内関外日記」であり、愛読する新聞は内外タイムスなのだ。はっきり言っておくが、現代は真実と虚偽の境界も喪われている時代である。
 ……この後、つらつらと印象に残ったところをメモするつもりだったが、事情が変わったので今日はこれまで。続きはいずれ。