森山公夫『統合失調症 -精神分裂症を解く-』を読む

統合失調症―精神分裂病を解く (ちくま新書)

統合失調症―精神分裂病を解く (ちくま新書)

 吉本隆明がこの本を非常に評価していたので、どんなもんかと思って読んでみた。結果からいうと、吉本も指摘していたとおり、この新書という形にするには無理があったんじゃないかという気がした。著者本人もそれについてあとがきで触れている。
 というわけで、どのあたりが無理かというと、やはり新書のサイズには収まりきらないなにかを収めようとしているあたりに無理がある。そして、専門家でもない新書読者に対して説明しようとするも、やはり入りきらない。ときどきえらく難しいことが前提になってしまってもいる。あるいは、関連書や先行する研究にあたってくれというリンク集になってしまう。いや、クレッチマークレペリンも追えないよ。
 というわけで、なんというか「読んだ」といっても、「目を通した」くらいかな、というあたりでなんともいえない。とくにおれは統合失調症にも有効とされる薬物を投与されているとはいえ(すばらしいジプレキサ)、お隣さんの双極性障害(の軽い方)なのであって、当事者としての実感というものが湧いてこない。やはりお隣さんという感じなのである。
 とはいえ、いくらか同じ精神疾患全般についての言及などからいくつかメモする。

 実は、精神疾患に悩む患者さんたちはみな、この自明性のゆらぎ、またはその喪失に悩んでいます。(中略)うつ病の人は、「なぜ人間は生きるのか」という問いにとり憑かれています。躁病の人は、人々の常識的な営みを馬鹿にしています。
p.031

 単極性の躁病というのはあったのだっけ。まあいいや、躁状態だとそういうことになるのかな。おれは軽いやつなので、せいぜい軽躁、むしろうつ病の方がほとんどなのでよくわからない。ただ、「自明性のゆらぎ」、健常者にとっての「自明性」、時代によって「自明性」は変化するのか、そのあたりは興味深い。

 「社会的断絶」と「組織の出現」は、決して心理的レベルだけで起こる事態ではなく、同時に身体の生理的レベルをも巻き込んで本格化します。睡眠障害と過労が進み、生の二十四時間リズムが崩壊するのです。「社会との断絶」は生の二十四時間リズムの崩壊を伴います。人間での二十四時間リズムは本来の太陽系の構造に規定されながら、共同体のリズムとして具体化されます。「社会との断絶」においては共同性の二十四時間リズムが崩壊するのです。この時、情動(気分)障害もより深まっていきます。
p.178

 この先生はよく生体リズムというか、睡眠の重要性を訴えてて、おれはそこんところもっと知りたいな、というのはある。まあ、眠りが重要だというのは当たり前っちゃあ当たり前だが。でもって、なんというのか、これを逆手に取ってといってはなんだけれども、洗脳とか洗脳みたいな新人研修とか、共同体と断ち切ったところで不眠不休の何かをさせたりするとか、そのあたりの掟破りの逆なんとかをやってんのかなーと、素人の想像。そうして人工的に作り上げた「病人」こそが、現代ビジネス社会にとって有用な戦士ということになりゃ、そりゃ社会が狂ってるよな。おれが狂うのも当然か。

 まあ、そんなところで。

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