遅れてきた先駆者へ

http://www.sponichi.co.jp/society/news/2005/11/08/09.html

 サラリーマン棋士瀬川晶司さん(35)のプロ編入試験合格から一夜明けた7日、勤務先の「ワイイーシーソリューションズ」(横浜市中区)で喜びの声が響いた。

 「ワイイー」が喜びの声っぽい。……というのはどうでもよく、ついに瀬川昌司がプロの将棋指しとなった。日記を振りかえる(id:goldhead:20050304#p2)と、この件の発端は今年の三月で、けっこうな長期戦だったわけか。プロ入り決定後はかなりテレビでも取り上げられており、日本将棋連盟としても万々歳……だったのかな?
 今回マスコミが伝える論調は、瀬川氏を讃えるのと同時に、奨励会とその年齢制限について批判的な意見が多かった。「将棋が強ければ何歳から棋士になったっていいじゃないか」と。これはもう真っ当な意見だ。しかし、これをどうにかするにはプロ棋士という身分そのものの根底から見直すこととなり、これはもう大問題だ。
 やはり、これで思い出さなければならないのは競馬だ、安藤勝己だ(道川満彦氏のケースもその前にあったが。横山賀一は……やはり違うと言わざるをえないか)。閉ざされた中央競馬騎手という身分への挑戦は、非競馬メディアからも多少注目を浴びたような気がする。しかし、アマ/プロというほど明確な差でも無かったせいか、非競馬メディアにおいてはあまりJRAへの疑問の声は少なかったろうか。で、結局JRAが取り入れたのは、中央で一定の条件を満たしたら……と、条件付き開放。結果として、中央でバンバン依頼が来るような地方騎手が、中央に入ってくるようになった(赤木高太郎騎手はレアケースか)。
 ここらあたり、「年齢制限は堅持」と言い切った米長邦雄が見習いそうな制度だろう。すなわち、「アマプロ戦における戦績」の基準を明文化し、さらに編入試験も明文化。こちらは競馬と違って、試験自体が興行になるのだからおいしい話でもある。奨励会三段諸氏には、将来のチャンスができたということで納得してもらう。これでどうか。
 が、丸く収まらないのは「プロより弱いアマ」の存在。順位戦下位にゆっくりと下っていくベテラン高段者より、奨励会三段やアマ強豪が強いのは当たり前という感じで、前者はプロだが後者はアマ。ここらあたりの整合性、ここがどうなるか。競馬でも、中央下位騎手とそこらの地方騎手では、後者が巧者であるケースが多いのではないかと思う(のは贔屓かな)し、目立ったトップクラス以外の関係、という問題が残る。
 まあ、それは別の話として、瀬川晶司四段には頑張ってもらいたい。「アンカツ並み」とは言わないまでも、フリークラス四段はもちろん、順位戦編入ぐらいで満足してもらっちゃこまる。将棋世界を勝ち上がっていくのは並大抵のことじゃないが、遅れてきた先駆者としての意地を見せてもらいたい。関内に勤めていた(http://www.yec.ne.jp/)人に、関外からエールを送る。