トウショウファルコ、根岸の山に眠る。

 先週の土曜日、根岸森林公園に行きました。計ってみると、自分のアパートから歩いて十分そこらで着くのですから、これからは気軽に散歩してみようかと思いましたよ。そして、公園の方から入って用事を済ませ、足早にポニーセンターに行きました。思えば、ファルコが死んでからはじめて訪れたのです。しかし、馬房の方に行ってもファルコの痕跡が何もなく、ひどく寂しく思いをしたものです。死ねばそれで終わりなのか、と。
 ところが、馬坂を上って馬の博物館の方へ行く途中、「トウショウファルコ号ここに眠る」と、馬頭観音も弔いの花でなにやら賑やかな様子ではないですか。私は大変驚いた。どの花も新しく華やかで、まさにトウショウファルコに相応しい。馬房にあった柴田政人との雄姿が写ったパネルも飾られて、黄金のファルコの馬体も輝いている。私は、黙って手を合わせました。

「何かの本で読んだんだけれどね。天国っていうのは、私たちの記憶や追憶で出来ているんだそうだ。だから、わたしたちがその馬を覚えているかぎり、彼らは天国でも走り続けられるはずだよ」

―『競馬漂流記』高橋源一郎