トンネルの中の意味論

goldhead2006-03-23

 左手にカップ麺とおにぎりが入ったコンビニの袋ぶらさげて午前零時四十分。俺が歩いていたトンネルの中を向こうからオレンジの回転灯。ゆっくりゆっくり回転灯回ってトンネルの壁照らしてサイレンはなく、俺はなんだかその光に魅せられて、パレード見つめるように見やる見慣れぬ車体はゴミ回収車のようなトラックで、下に液体を垂らしつつ向かってくるところ。道路維持車両などと書いてあってあの液体はなんぞやと思うに俺は思い当たった、鳩の屍骸のぺしゃんこになったやつを溶かすに違いないのだ。鳩の屍骸は自動車の轍のところで轢かれたやつなら、鳩煎餠の亡骸晒すのもつかの間、車に轢かれ轢かれ轢かれあっという間に鞣されて染みになる。ところが車線の真ん中オートバイに轢かれたとおぼしき鳩煎餠、あまり轢かれず原形のわずかにとどめたまま彷徨う現世の無残。それをあのオレンジカラーの一台パレードの垂れ流す消化液が溶かす、溶かす、溶かして無残鳩の亡骸で道を維持する。俺はそのからくりに心醉して溶かす液体を道に垂れ流しながらオレンジの回転灯、オレンジの光、オレンジの光が行くのをただ見守って、そうしたらもう一台来た、別のやつが来た、なんだこれ、からくり仕掛け、回転式のモップみたいなの両端に、別の色々のブラシが出てて、オレンジの回転灯がパレードみたいで、ゆっくり前進しながら、それでもモップ連中のからくり仕掛けは微細な振動で、道を、道を清掃していく。そうだよ、溶かす液体を道に垂れ流すのはスマートじゃない、ああ、なんていう合理性! 深夜に、この都市の仕掛け! 前の車がオレンジ色の回転灯を回しながら洗剤をまく! 後ろのからくり仕掛けが清掃していく! 道は維持される! 道はこれによって、ただこれだけによって維持されている! すごいものが来た! すごいものを見た! オレンジの回転灯! 俺は生まれてこの方こんなに興奮したことはなかった! 鳩の屍骸、鳩の煎餠、オレンジの光! もっと回れ! 光れ! 俺は生まれてこの方こんなに幸せだったことはない! もっと回れ、回るんだ! 俺は生まれてこの方これだけのものを理解したことは無かった!