俺、お好み焼き作ってたんすよ、いやね、俺にとっては「晩飯を作ってた」ってのとほぼ同義なんですけどね、それで、ちょっと冷蔵庫に体を向けたとたん、ガラン!って感じの鈍い音したんすよ、俺ね、ちょっと驚いて振り返ったら、一人暮らしはじめたときに、百円ショップで買ったちょっと大きめのね、陶製の平丸皿っていうのかな、まあお好み焼きのっけるための皿ですけどね、それがね、五つか六つに落ちて割れてたってわけでね、まあ、俺の頭より高いところから落ちてきちゃったわけで、当たんなくてよかったなってところで、そうやって落ちてくるのも当たり前で、俺って食器とか積み重ねるのに、何の計画性も無く積んでいくわけで、普通の場合、上下入れ替えたり、同じ高さでそろえ直したりするところを、その場その場のバランス取りだけでどうにかしていくって癖っていうか、こだわりっていうか、面倒くさがりっていうか、いや、どっちが面倒かわかんないんですけどね、まあ人から見たら稚気って言われりゃいいほうで、はっきりいって頭悪い感じなんですけどね、「ここの箸の突出した部分が上の皿を支え、それによってコップ二つの安定が保たれている」みたいなところに美学っていうかね、建築上の美学を感じるって感じ、まあわかってもらえないところなんですけどね、そのせいで愛用の皿が割れたということで、少し残念なんですけどね、まあ割れたらまた買えばいい、今度はプラスチックからメラミンにすりゃあいいと、そんなもんなんですよね、ええ。