お好み牛玉丼(すき家)

 すき家の社員というのは、たぶん毎日、盛られた牛丼並を前にして、上に何かのっけたり、かけたり、かき混ぜたりして、新しいメニューを考えるのが仕事ではないかと想像するのだけれど、その成果であるところの「お好み牛玉丼」、二年くらい毎晩のようにお好み焼きを食べていた俺としては、やはり避けて通れず、「お好み、並で」などと注文してしまったのである。
 して、出てきたのは、牛丼の上に刻まれたキャベツ、そしてソース、マヨネーズ。鰹節と青のりはビニールパック入り。そして卵。生卵がついてくる。例の、悪意の分別に満ちた卵セパレータはついてこないので、溶き卵をぶっかけるのかと思うも、目の前のメニューにある写真を見てみれば、黄身だけがつるんとのっかっている。さあどうしたものだろうか、卵の殻を使ってうまく黄身だけを救い出せというミッションなのかどうか。いや、白身代も払っているのだ、だいたいお好み焼きを作るときも、黄身だけなどということはないじゃないか、と、かき混ぜてぶっかける。そして、青のりと鰹節のビニールパックをちぎってふりかける。しかしこの、なんというか、卵まではいいのだが、ビニールパックというのは、正直、一応は店で食べているというのに、これは違和感があるのだが、どうだろうか。
 さあ、味の方だ。牛丼+お好み焼きで、なにか新しい反応が起こり、味のミラクルが発現しているだろうか? 答えは否、あくまで「牛丼にお好みソースとマヨネーズ」の味であって、またこの、想像の範囲を超えないあたりが、すき家の真骨頂というか、路線なのだろうかなどと思う。ホワイトシチュー牛丼などもそうだった
 ただ、この、なんだろう、しつこさ、これは否めない。予想の範囲内ながらくどい。くどさは否めない。オタフクソースが響いてくる。俺は、お好みソースはブルドック派なのだ。しかし、救いはあって、おおよその牛丼屋に用意されている紅ショウガであって、牛丼+紅ショウガ、お好み焼き+紅ショウガがともに定番であるところの、ダブルニックスないしはインブリードが成立しており、いつもより紅ショウガ多めで、ということにあいなる。
 そんなわけで、何となく負けそうになりながら、お好み牛玉丼を食べたわけだけれども、まあもう頼むことはないだろうと思う。あと、お好み焼きならむしろ豚丼じゃねえのかとか、そんなことも思い、一応メニューのページを見てみると、やっぱり節操なくバリエーション化されており、しまった、豚だったと、たとえば豚でもう一回食うかとか、まあそんなことを考えたり考えなかったりする。