ザワークラウト戦記

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 850mlのザワークラウトザウアークラウト)の瓶というのは、なかなかの存在感がある。商品棚においたまま回転させて、説明など読む。ひっくりかえしたまま、いったん離れる。離れて買いもしない惣菜などを眺めて、また戻り、今度はカゴの中に瓶を入れる。この重さで四百円少々ならば、いい買い物だと思おうとする。今まで、意識してザワークラウト食べた覚えはない。
 蓋が開かない。開かないのを予想して、「金具などを押し込んで空気を入れると開けやすい」などと記述してある。しかし、蓋のどこに何の金具を押し込むのか想像がつかない。とはいえ、非力な自分の握力ではとうてい開かないのは目に見えている。彫刻刀の平刀を、蓋と本体の隙間に差し込む。てこの原理で蓋を変形させる目論見。がりがりとガラスが削れる。なかなか空気が入らない。そうして力を入れていると、彫刻刀の方が参ってしまい、木が裂けてしまう。外に持って行って、コンクリートに叩きつけて瓶ごと割ってやろうかと思うが、おそらく瓶の方が強い。彫刻刀の犠牲の上に開いた隙間に、閉じた鋏を差し込み、ねじる。ねじってようやく、空気が入り、あっさりと蓋は回った。
 そのまま食べる。あまり、おいしくない。火を通す。ささみと舞茸をバターで炒めるところに投入する。今度は、いい感じだ。翌日、今度はジャガイモとソーセージを用意する。気分はドイツ人。ジャガイモは電子レンジで加熱し、炒めたザワークラウトとソーセージのフライパンに投入。見栄えなど考えずにかき回していると、焼きビーフンのようにも見える。胡椒をふり、オレガノをかけてみる。茶色い。これがドイツ。ドイツの質實剛健さ。ゲルマン魂。熱いドイツの魂を食う。食ってビールを飲む。ソーセージは米国からの輸入品で、ビールは日本製、オレガノはトルコ。明日はコンソメで煮込む。850mlのザワークラウトというのは、なかなか減らない。