四月は……

四月は残酷な月。
むらさきはしどいの花やうやう死せる土から這い出し、
思い出だけが性感帯。
鈍くなりたる根を、春雨のやさしくお触りするのを。

 春は本当に鬱々とする。私をさいなむひどい季節だ。たしかT.S.エリオットさんもそんなこと言ってたっけと夜思い出す。私にはインターネットが無いので、携帯から検索する。「春は残酷」っと。出てこない。いまだになじまないところのあるインターフェースをさまよう。ようやく見つける。そうだ、これだ、とてもぬめぬめしている春の気配あってしっくりくる。しかし、春、ではなく、四月、だ。俺のしっくりした感はどこへ行けばいいのか。勝手に超訳して三月にしてしまえ、と思う。しかし、三月にライラックはいかにも早い。三月だけれど四月に戻そう。イエモンの「思い出だけが性感帯」というフレーズは好きだ。彼らの歌詞の中で一番好きなフレーズかもしれない。それに、「球根」なので季節も合う。と思ったら、「BURN」だった。夏の海や冬の街を歌っているのだった。俺の合うはどこへ行くのか。しかし、そもそも南半球の人はテイエスエリオットの詩をどうすればいいのか。ライラックがいつ咲くのかも違う。しかし、エムデン海淵から来る何かはそれをものともしないのかもしれない。