『夢みる宝石』シオドア・スタージョン/永井淳訳

夢みる宝石 (ハヤカワ文庫SF)
rakuten:book:11575910
 カート・ヴォネガットの『ジェイルバード』(id:goldhead:20070501#p1)とともに100円で手に入ったのがこれ。読んだのはとっくの昔だったが、感想文をメモするのを忘れていた。
 スタージョンを読むのがこれが初めて。それでも、このスタージョンは俺好みだというのはほぼ確信していた。どっかで名前を見るにつけ、きっとそうに違いないと思っていた。絶対そうだと思っていた。絶対に読むべきだ、と。そんなスタージョンですら、俺は古本で安く手に入るまで我慢してしまうのだけれど。まあ、俺は俺好みの本を俺に提供する俺の打率はかなりのもんだと思う。
 しかして、その想像は当たっていた。いける、いけるよスタージョン。巻末解説では取っつきにくさについて書かれているけれども、俺はこれ大丈夫。P.K.ディックの破綻も、南米文学の幻想一歩向こうも、ちょいとゲテモノ好きな俺には食えるよ。
 いや、しかし、この解説によれば、スタージョンが影響を受けた作品としてロード・ダンセイニの『雑役婦の影』があげられている。これって『魔法使いの弟子』(id:goldhead:20050216#p3)の以前の邦題だよな。いや、ダンセイニ卿の名前が出てくるとは思わなかったな。それでもって、キルゴア・トラウトのモデル説なんてのもあるみたいで、好きなものは不思議と繋がってくるものだ。

 『夢みる宝石』はどんな話か。やっぱり説明しにくい。別に説明しなくてもいいか。里親に虐待された子が逃げて、サーカスの一員になる。フリークショウの一員になる。出てくるのは小人その他。それでもって、その中のジーナときたら、これこそ文学の結晶というように美しい。かなわんね。
 でも、バチッと、ガシッと完成された、隙のない作品でもない。どっかしら、ディックの一部の作品っぽい破綻みたいなのも感じる。でも、そんなのは些細だ。鉱物趣味の人など、とにかく読んでみればいいと思う。澁澤龍彦あたりも好みそうに思うし、澁澤龍彦好きな俺はこれが好きだ。

 というわけで、今までもリストの先頭グループにあったスタージョンだが、自信が確信に変わったことによって、かなり踏み込んで取りに行こうかとか思ったり。でも、積んだままの本もあったり、何より、読むべきときは勝手に来るものだから、流れに任せようっと。