夢の話をする。たいていにおいて他人の夢の話はおもしろくない。そもそもおれの書くものがおもしろくないのだから、どう申し開きもしない。とはいえ、これから書き記すのは、「きのうこんな夢を見た」という夢の中身の話ではない。「このごろこういうタイプの夢を見る」という話である。おもしろくないのには変わりがない。
さて、それはどのような夢かというと、本を読む夢である。本を読んでいる自分を客観的に見るとかそういうものではない。夢の画面というものがあったとしたら、それは読書のときと同じく、文字で占められているのだ。そして、自分は、文章の意味をきっちりと追いながら、そこに書かれている物語を読んでいく。きちんと筋が通っている。ページをめくっていくだけで、読書の場面から急展開して……とか、その物語のなかに入って……ということもない。ただ、文字を読んでいる。
これに少し違ったバリエーションも出てきた。漫画を読む、だ。これも文章を読むのと同じく、実際に漫画を読むように、視界のほとんどは漫画である。きちんとした漫画である。筋は通っているし、おもしろいとすら思う。そして、やはり漫画の中に入ってとか、自分がその作品の主人公の立場になって……というような夢らしい展開が起こらない。ただ、漫画を読んでいる。
目が覚めると、話の内容は残っている。おもしろいんじゃないかとすら思う。小説であれば、そのまま書いてしまえば成立するんじゃないかとすら思う。おれに漫画は描けないけれど、漫画作品として成り立っているんじゃないかとも思う。とはいえ、シャワーを浴びているころには霧散してしまうのだけれど。
おれはさきほどから、成り立っている、成立しているというけれど、まあそれは夢の話なのであやしいところはある。しかし、夢の中のおれは飽きることなくページをめくっている。けっこうな分量を。
よく、色付きの夢を見るかどうかという話がある。これについていえば、もはや身体もほとんど動かしていないし、動きすらない。立体でもない、平面の夢である。おれはもう、年をとって、動く夢が見られなくなってしまったのだろうか。それはそれで興味深いが、夢の醍醐味といえば空を飛んだりするようなありえない体験であって、それが失われるのは少し惜しく思う。
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