馬たちの隊列が西日のつくる自らの影を追いかけて二度目の直線に入るとき

 わたしの本命馬はどこにいるのでしょうか?
 菊花賞です。菊花賞の出馬表を見て、一つ意外な名前を目にしました。ブルーマーテルです。このパラダイスクリーク産駒の牡馬を、わたしは今年の二月ころから追いかけています。五百万、九百万と連勝してくれたこともあり、追いかけたかいがあったといえます。
 そんな馬なのですが、条件戦で人気になりにくい騎手を乗せ、あんがい美味しい馬というイメージでしか見ておらず、急に「菊花賞」に名を連ねることに、大きな違和感があったのです。近所の顔なじみの中年男性が、実はまだ高校生で、今度甲子園に出るらしいというような違和感です。いや、それは違和感では済まないかもしれませんが、ともかく、ブルーマーテルと菊花賞が結びつかなかったのです。
 もちろん、応援したい気持ちはあります。しかし、やはりここでは厳しいように思えます。せめて中距離であったならば馬券にもと思えますが、この距離では厳しい、そう思います。もちろん、応援の単複、まさにがんばれ馬券は買いますが。
 がんばれといえば、やはりホクトスルタンは応援したくなる馬です。馬券の対象としてはどうかと思いつつ、あるいはちょい穴を夢見ながら、そう思う競馬者は少なからずいるでしょう。父系はメジロアサマからつづられた説明不要のステイヤー史。母系に配合されてきたのはシーホーク、ノーザンテーストリアルシャダイサンデーサイレンスと、まさに日本種牡馬史。この馬が勝ったならば、素直に拍手をおくりたい。現役時代に間に合わなかったメジロマックイーンにも拍手をおくりたい、偉大な父たちに拍手をおくりたい、そんな気持ちになります。
 ……さて、馬券はどうしましょう。本当に悩むところです。ここのところの菊花賞の傾向を見ると、どうも切れ味が求められるようです。サンデーサイレンス産駒が得意としたような、切れ味勝負です。そういう意味では、母父にメジロマックイーンを背負ったドリームジャーニー武豊のコメントなどから、おそらく3,000m級が向かないというのは事実でしょう。かといって、競馬は相手あってのものなので、勝負にならないことはないと思います。ドリームジャーニーの他にも切れる馬は多そうです。
 しかし、切れ味勝負にならないケースもありそうです。先行馬がガンガンやりあって、早い展開。ハイペースになると、距離以上のスタミナ比べになる場合があるはず。そこでドロドロのステイヤーがロングスパートをかけて、後続待機組の切れ味を殺す。そんな展開も有り得るんじゃないでしょうか。では、いったいどの馬がスタミナのガソリン満タンテンリットルなのか……、これまた血統的にステイヤーじゃないかと飛びつきたくなる馬、多いです。
 というわけで、今年の菊花賞、馬券的にはかなり楽しく悩めるものだという気がします。私としては、まず前から行く馬か、後から行く馬かを決めて、その上で組み合わせを考えたいと思います。それとも、馬に目をつぶって、騎手で買ってしまいましょうか。ともかく、牝馬ウオッカ東京優駿をとられたことで、レベル的に疑問視されるレースであることは確かですが、好勝負を期待したい。少なくとも、ドスローからの前残り、後方不発というのは、あまり見たくありません。せっかくの菊なのですから。