スーパー殺害ビニール

 私がほぼ毎日利用しているスーパーは、BGMに適当な流行歌が流れている。ただ、有線放送というわけでもなさそうで、なんとなく誰かの趣味を反映したようなチョイスがヘビーローテで垂れ流されていて、毎日通ううちによく知らない人のタイトルも知らない歌詞を覚えていたりなどということになる。
 最近よく流れているものの一つは「崖の上のポニョ」である。小さな子どもなどは「ポニョだー」などと口走るのでほほえましい。ところで、ポニョの歌が流れたら魚を買うべきなのだろうか。そのあたりはよくわからない。
 もう一つが、こともあろうに映画『デトロイト・メタル・シティ』の「SATSUGAI」である。「殺害、殺害せーよー!」と、普通の食品スーパーに響き渡る。これはシュールだ。いや、スーパーマーケットとしてはいきなり冷凍した豚の頭を売っていたり、特売としてでかい豚の耳が並んでいたりと、中華街が近いせいもあってか少し普通ではない。しかし、やっぱり明るい店内に「殺害、殺害」流れると、こちらとしてもどうしていいかわからない。
 ただあれだ、以前見た寿町系とおぼしきおっさんの半額シールをめぐる闘争、あれのBGMとしてはいいかもしれない。そうだ、スーパーは戦いだ。私は私より貧しそうな人が半額コロッケを前に逡巡していても、容赦なくそれを横から奪い取る。なぜなら私も貧しいからだ。