ふと気づくと、俺はラジオを一つしか持っていなかった。カネツクロスが何かのレースに勝って、俺も馬券で勝って、その金で買ったポケットラジオだ。短波放送も入るのが売りだ。それなりに高いものだったと思う。
で、カネツクロスというからには、俺にとっては去年の冬くらいのイメージであっても、こちらの暦では十年前ちかく前の話だ。したがって、「いざというときのための金」として、ラジオ本体とビニール・ケースの間に挟まっている夏目漱石の千円札もずいぶんくたびれてきている。もっとも、ラジオとしてはまだまだ現役の気配ではあるが。
まあともかく、もう一個くらいラジオがあったほうがいいんじゃねえか、という結論に達した。ポケットラジオを職場で使って(仕事中こっそり競馬中継や野球中継を聞くため)、そのまま忘れて帰ったりしたらおもしろくないし。それで、今度は部屋置きのにしようと、Amazonなどを物色。
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が、やっぱり値段が気になってきた。2,000円出すか? と。と、そんだったら、もうちょい出して、短波入った方がよくねえの? と。それでもって、さらに物色。
パナソニック ワールドバンドラジオ 海外放送・国内放送受信ラジオ ブラック RF-B11-K
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それでもって、届いてみればこのラジオ、なんともアナログ。つまみ、目盛り(メモリ、じゃないよ)、みんなアナログ。だが、それがいい。なんというか、この21世紀にこのスタイル、もはや枯れた技術、完成品もいいところなんじゃねえのって。
性能の方は、AM、FM、問題なく入る。ラジオNIKKEIも今までよりよく入る。が、その時点で俺の興味は「海外の情報をキャッチ」の方に行っていたのは言うまでもない。海外の情報が、生で自分のアパートの部屋のラジオに入ってくるなんて、なんてロマンチックやん、と。
と、わけもわからず、適当にバンドを動かしつつ、つまみを回しつつ……、お、入る、雑音混じりながら、なんか入ってくる。この早口なのは……ロシア語? さらには、ロシアの日本人向け放送? 放送時間終了? あ、韓国語。なんだかわからんが、カタカナ語として聞き取れるところから判断するに、これは北朝鮮のロケット打ち上げの話だな、他にはなんだ、これは中国語? さらにはネイティブではない日本語? 北京放送?
……という具合に、なんだかわからんが、まあともかく東アジアのいくつかの何かを受信することとあいなった。なるほど、Amazonのレビューにあるように、「世界」といっても聞こえるのは限られている。が、なかなか面白い。日本に居ながらにして、世界の情報が、生で入ってくるんだぜ。なんかワンダーだ。それにこの、盗み聞きではないんだけれども、なんか傍受している感じというか。いいなあ、ラジオ、無線。これはもう、インターネットで世界をのぞき見るのに慣れた身からしても、なんともいい。いいんだ。何がいいんだかわからんが、いいに決まっているんだ。おしまい。