中央競馬ワイド中継の終わりについて

正式に番組でもお知らせしましたが、長年可愛がっていただきました、「中央競馬ワイド中継」は、今年一杯で終了することになりました。今まで本当にありがとうございました。感謝の気持ちを忘れず、残りの放送を全うしたいと思います。また、たくさんの温かいメールをいただきまして、大変嬉しいです。リクエストに関しては、引き続き募集していますので、よろしくお願いします。

http://mp-tv.co.jp/keiba/

※このエントリのBGMはスチャダラパーの「Antenna of Empire」です。各自購入して聴くように。
 U局で放送されている“メインレースだけじゃない競馬ファンのための競馬中継”中央競馬ワイド中継が放送終了になる。
 まったく、どうしたものだろうか。
 いや、実のところ、「中央競馬ワイド中継」とのつきあいは短い。鎌倉にいたころはTVKがまったく映らず、横浜に引っ越してきてからもしばらくは、そうとうに砂混じりだった。ようするに見られなかった。
 これが見られるになったのは、最近の話である。

 先月末から我がワンルームアパートがケーブルテレビ化した。TVK中央競馬ワイド中継が見られたり、TOKYO MXで大井競馬のナイターが見られたり、地元ケーブル局の地域番組でラブカップルが見られたりと、なかなかの充実ぶりである(24時間放送の通販チャンネルは空虚な気持ちになるので危険)。

テレビ欲しくなった。 - 関内関外日記(跡地)

 アパートが地デジ化対策として、ケーブルテレビを導入したのだ。これによって、「中央競馬ワイド中継」が見られるようになった。さらにこののち、地デジ対応テレビを購入で、TVKのほか、チバテレビテレビ埼玉からも「ワイド中継」を見ることができるようになったわけだ。そんなに見られても意味はない。
 というわけで、2年半くらいのつきあい、ということになる。だから、俺の知っている「中央競馬ワイド中継」は現行体制がほぼすべてだ。これより前のことは文字上でしか知らない(別冊宝島競馬読本を通じて読んだ丹下日出夫のエピソードなど)。
 パート1については、それほど熱心な視聴者でもなかった。というか、はっきりと週末競馬生活に組み込まれたわけではなかった。なにせ、「ワイド中継」無しでの競馬生活が長かったのだ。
 まず、桜木町の場外に通っているころとなると、だいたいその間ワイド中継を見ることはない。このところはネット投票がほぼ100%になり、土曜日は出かけてしまうことが増えた。
 日曜、家で競馬というパターンの場合はどうだろうか。朝はラジオ日本「中央競馬実況中継」、これである。長谷川仁志ファンとして、1Rから聞き逃せない。「長谷川仁志のG1レース展望」も朝早いのだ。だいたいこれで午前中を打ち、長谷川の出番が終わると、次は塩崎利雄であって、塩崎利雄も悪くないのだが、長谷川仁志が好きすぎるので、とりあえずラジオを切る。切ったところで、ちょっと間があって「ワイド中継」のスイッチをいれる、というところか。あるいは、午前中の結果を受けて「もう、競馬は金輪際やらない」などと言いながら、スーパーに買物に出たりする。特別レース二つ目くらいまでには帰ってくる。とりあえず、テレビはずっと「ワイド中継」を映している。
 パート2に関しては、そうとうに熱心な視聴者といえる。最終で取り返せばいい脳の恐怖。そんなにうまくいくものかよ。最終の終わった競馬場をワイド中継が映し、俺はふて寝してしまう。また来週。
 いや、けっこう組み込まれているではないか。いったいどうすればいいのか。代替らしき番組がBSイレブンとかいう局だという。

 正直なところ、BSイレブンってなんですか? というところ。この話を見るまで存在をまったく知らなかった。どうやって見るの? BS? アンテナがいるの? ケーブル(J:COM横浜)経由では? 別途料金。というか、この番組、金をかけてまで見たい? 見たくない。まったく。今までグリーンチャンネルにすら興味を抱かなかった人間にとって、これに金を出すのはない。貧乏人だもの、ちょっとでも馬券を買う金に回したい。でも、「中央競馬ワイド中継」が移行するなら真剣に検討した。それはある。
 まあ、これを「切り捨てだ」と言う気はない。なにせ、もとからU局視聴困難者だったからだ。それゆえに、「地デジでみんな見られるようになったところで、なんで?」という気はするが、これを全国規模で見たら、首都圏生活者の傲慢なのやもしらん。
 とはいえ、BS行くなら行くで、「ワイド中継」じゃいけなかったのか、という思いはある。だって、これはいい番組だったぜ。この昭和の安心感、何十年も見てきたように感じる強烈なホーム感。俺の知っている競馬世界、そこにはお笑い芸人もグラビアアイドルも出張ってこない。
 ……という一方で、「これがいつまで続いてくれるものだろうか」という気もしていた。いや、これは「中央競馬ハイライト」(こちらについては正式のアナウンスメントはまだみたいだが)の方を見ていて強く感じたことなのだけれども、白川次郎に星野英治、飯田正美のいつもの面々。五十年続いてきたような空気、俺が非常に愛するような空気。でも、それはなんというだろう、それでいいのか、という気も同時にするのだ。よく須田鷹雄が「若くない若手」という表現をするが、そのあたりの競馬評論に関する世代交代のようななにかについて。番組の枠はともかくとして、そのあたりの更新があれば、というような気も。
 いや、いろいろ考えたところでなにがいいのかはわからん。「いい」というのは、競馬全体にとってだ。競馬業界というものが繁栄し、というのは高望みとしても、少なくとも存続するような方向に行く、「いい」方法だ。俺は、いくらテレビがかつての地位を失っていく過程にあるとしても、やはり地上波を取り上げられたものはより小さくなっていくと感じるし(プロレス、格闘技、野球など)、間口は大切だと思う。そのあたり、今回のケースでいえばU局と地上波デジタルの比較などもあるだろう。あるいは、若い、新しいファン、あるいはファンになりそうな人にとって、TIMと長岡一也はどちらがいいのか、などというマーケティングの面もあろう。それはわからん。
 ただ、俺は、このご時世、あえて競馬を始めるような人間は、長岡一也の価値を認めるのではないかと思いたいし、テレビ越しであれ柏木集保の謦咳に接するほうが面白いんじゃないかと思う。勝手な思い込みだが。あるいは、俺の知らない有料放送の世界にはそれがあるのかもしれない。それは知らん。「プロ野球ニュース」もどこかで生きているという話だ。俺にとってはプレスター・ジョンの国のようなものだ。いや、行こうと思えば行けるのだが、いずれにせよ、初心者がいきなりそこに行くことはあるまい。
 以上が、「中央競馬ワイド中継」放送終了を知っていろいろ感じたことのおおよそである。あまり整理がついていないところもあるが、だいたい俺は整理されていない人間なので仕方がない。ただ、これから何年生きて、何年ものを考えて、ものを述べることができるかわからないが、新しいものを得る喜びよりも、すばらしいものの訃報に接して追憶の小箱になにかをしまっていくことのほうが圧倒的に多くなるだろう、その確信はある。おしまい。