中央競馬ワイド中継の幸福な終わり

 朝2レースほど打って、3連単など獲って調子よし。いい気分で床屋へ。有馬記念の前は散髪するのが競馬人の矜持である。店はそれなりの混み方。待ち合いでタバコを吸いはじめる客がいて面食らったが、灰皿は用意されているのであった。自分を担当した理容師のおっさんがやけに咳き込んでいたのが気になる。
 有馬記念ルーラーシップから今年の負けを取りかえそうかという買い方をして玉と砕ける。俺はキングカメハメハにもエアグルーヴにも思い入れはない。俺がエアグルーヴの世代で思い入れがあるのはアジュディケーターであって、2歳戦のどれかで酷い不利をこうむりながら巻き返した勝負根性に、同級のA君と「これはすごい!」と盛り上がったものだった。ちなみに、高村薫の『レディジョーカー』にアジュディケーターのレースが描かれていたような記憶があるが、混濁している。
 そして、中央競馬ワイド中継、中央競馬ハイライトの終わりの日。

 俺とこの番組の関係は上に書いたくらいのものだが、さすがにほろりと来るシーンも多い。実に競馬好きが集まって作っていた番組なのだろう。同じようなグルーヴは、なにかマニュアルがあって作られるものでもないだろう。
 せめて、幸福な終わりかたをしたとでも思おうか。変なテコ入れがあって、芸人やグラビアアイドルに蹂躙された挙げ句、おざなりな回想シーンで終わらなくてよかったと。
 ただ、現実問題として、本当は少しずつ更新していくことも必要なのだったと思う。いつまでもあのお歴々に頼むばかりではいられない。もちろん、それはなかなか難しいことだろう。笑点もむずかしかったのだろう。
 しかし、競馬中継が、興味のない人間にとって教育テレビの囲碁や将棋のように、あまりにも華がない、若さがない、キャッチーさがない、というものではいかんようにも思う。そのさじ加減。JRAの宣伝や、フジテレビ地上波、深夜については、別の舵を切ってああなっているのだろう。
 とはいえ、やはり初心者向けというものを延々と垂れ流すことで、ファンでない人がファンになっていくのかどうか。ある趣味に対する興味は、その趣味者がコアのコアのところでわけのわからんところに夢中になっている、その姿によって強まるのではないか。俺はそう思う。