ヤマノリュウセイ号がダービーを勝つ夢

まだ引っ越しの荷物は梱包されたままだ。やはりこの部屋に住む。急いで大家に連絡してもらわなければ。
しかし、それより、日本ダービーの発走が近い。もう日も傾いてきた。
テレビの入った段ボールはどこだ? わからない。薄型なのが悪い。じゃあブラウン管の方は? わからない。もう時間がない。
ポケットラジオで1422に合わせようとする。新しいラジオを買っているのもわかっているが、今はこれしかない。
ラジオの調子が悪い。たぶん、ダービーは発走してしまったはず。
ようやく1422を受信できる。樋口アナの高い声。
しかし、もう配当の読み上げだ。それでも俺は、俺の馬券が当たったのかどうか、固唾をのんでラジオに聴き入る。
「1着は11番…」
俺が買ったのは11番だったかどうか? そのような気もするし、違うような気もする。
「意外と人気を落としていましたね」
樋口アナが配当読み上げに私情を挿むのは珍しい。しかし、ここで人気を落とすということは、皐月で大負けした実績馬? 俺はあまりそういう馬を買わないような気もする……。
単勝1020円」
うーん、実績馬が人気を落としてこの配当、あまり買わない馬券という気が。
「勝ったのはヤマノリュウセイ」
……えー、ヤマノリュウセイかよ? こんな900万条件走ってそうな名前の馬がダービー勝つかね?藤澤厩舎に北村宏みたいな。まあ藤澤だけどさ、しっくりこないわ。俺そう思う。
そして俺は、また梱包の中からテレビを探そうする。今ならまだ、四時からのワイド中継のリプレイに間に合うかもしれない。最終レースに間に合うかもしれない……。

<解説>
 今朝、二度寝の中で見た夢。よくわからないが、俺の競馬観のようなものがよく出ているような気がしたので、そのままケータイでメモした。「大事なレースがあるのに、見られないかもしれない」というのは、わりと見るモチーフ。あとは、なんとなく、俺の買わないタイプの馬が勝たれたときの感じがよく出ている。たとえば、こないだの皐月賞でいえば、三着だったセイウンワンダーみたいな。なんというか、単勝十倍くらいの馬を買うとすれば、上がり馬みたいな、そのあたりというような。あと、ダービーではあんまりそのあたりに手を出したくないというような。あと、ヤマノについては、冠名を使ってる幾人かの馬主に悪いという感じだけれども。

 というか、検索したら実在した名前か。80年代後半に走っていた未勝利牝馬。さすがに知らない。血統の方も、現役に連なるラインは途切れてしまっているようだ。
 まあ、どこかの世界で、ヤマノリュウセイと名づけられた馬が日本ダービーを勝つこともあるだろう。そんなんじゃなければ、夢なんてものはありえないんだ、たぶん。

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