2023年ダービー回顧 スキルヴィング死す

東京スポーツ紙より

おれは「ゆりかもめ賞」を勝ったスキルヴィングを見たとき、これが今年のダービー馬じゃないかと思った。しかし、あえて「しかし」と言おう、スキルヴィングは青葉賞からのダービーを目指した。青葉賞からダービーを勝った馬はいない。だけど、おれは、スキルヴィングなら勝つんじゃないかと思った。思うことにした。長い長い青葉賞のジンクスを破る馬はこの馬だと。

一方で、青葉賞の勝ち方を物足りないと思う意見も目にした。それについておれは、スキルヴィングが弱いのではなく、ハーツコンツェルトが強かったのだ、という見方にした。

青い葉のころ - 関内関外日記

青葉賞の走りが物足りないという声もあるが、むしろハーツコンチェルトの評価を同様に高めるべきと見る。

第90回の日本ダービー本命はスキルヴィング。馬券はスキルヴィングとハーツコンツェルトからの馬複フォーメーション中心。そうなった。スキルヴィングを評価する以上、青葉賞で差のない競馬をしたハーツコンツェルトを評価せざるをえない。

ハーツコンツェルト。父ハーツクライ、母父アンブライドルズソング。ダービー2着馬スワーヴリチャードと同じ構成。スキルヴィングが2番人気に推されているのに対して、今回はかなり人気が薄い。おれがゆりかもめ賞でスキルヴィングを今年のダービー馬だと思っていなければ、こちらだけ買ったかもしれない。しかし、そう思えたのもスキルヴィングの可能性があってのことだ。

単勝一倍台のソールオリエンスはそのままの評価を嫌った。皐月賞は特殊な馬場で、展開がはまったという見方になった。力量は認めるが、そこまでではない。そういう評価。

レース。逃げるのはどの馬か。パクスオトマニカかホウオウビスケッツかドゥラエレーデかトップナイフか。いきなりドゥラエレーデが落馬。パクスオトマニカが離して逃げる。かなり盛り上げる。しかし、直線、タスティエーラが抜け出して、そのまま押し切る。

タスティエーラ。田原成貴皐月賞の直線について語っていた。「耳をぴょこんと立てて走っている」と。本気になった馬は耳を後ろに倒すという。ソラを使う、とは違うというが、本気ではないという。今回は、耳を後ろに倒して直線を走りきった。

二着にソールオリエンス。横山武史の時代はまだ来なかった。いずれ来るだろう。

そして、三着にハーツコンツェルト。

では、スキルヴィングはどこに行ったのか。落馬したドゥラエレーデを除く最下位入線。そして下馬。横たわるスキルヴィング。心房細動か? どうなのか。

しばらくして入ってきた報せは心不全で死亡。

日本ダービーでおれが本命にした馬がこんなことになったことはない。とても悲しい。しかし、鞍上のルメールを無事に下馬させたスキルヴィングは立派だった。……というような物言いも虚しいことはわかっている。わかっているが、そのくらいは言わせてほしい。スキルヴィングは立派にダービーを走った。ダービーを走れなかった数えきれないほどの馬もいる。スキルヴィングも立派だった。それだけだ。