けん玉の世界王者
俺はたまに、けん玉の世界王者のことを想像したりする。もちろん、本当に「けん玉の世界王者」的な人は存在するのだろうけれども、そういう話ではない。現実のけん玉業界とはいっさい関係ない、俺の頭の中で、俺はけん玉の世界王者を想像する。
俺の想像の中のけん玉の世界王者は、この、今の世界に生きていて、けん玉が世界一上手い。世界一どころか、今までこの地球上に生まれ、死んできた、あらゆる人類よりも、けん玉の才能があり、また、たゆまぬ努力でけん玉を鍛錬し、このあとこの地球上に生まれてくる、あらゆる生物よりも、けん玉が上手い。そのけん玉の上手さは、野球でいえばイチローのバットさばきなど問題にならないレベルにある。けん玉の世界王者のけん玉界におけるレベルに比べたら、イチローですらワン・オブ・ゼム、優れた野球選手たちのうちの一人に過ぎない。
しかし、そんな彼だが、現実には、せいぜい知る人ぞ知るレベルの知名度しかなく、また、一般的なプロスポーツ選手の最低年俸すら、けん玉から稼ぐことはできない。下手すれば、けん玉の上手なおっさんとして、NHKの地方局に紹介されるくらいが、キャリア・ハイかもしれない。
ただ、この世界が、ちょっと別の世界だったら、話は別だ。人々がけん玉に注目し、人々がけん玉巧者たちに熱狂し、そこに巨大な興行が、マーケットが成り立つような世界であれば……。けん玉の世界王者ほどの存在であれば、人々の尊敬をあつめ、巨万の富をえることも容易だ。そして、歴史に名を残して、死んでいけるだろう。
野球に、サッカーに人気があることに合理的な理由なんてない
しかし、その世界では、野球というのはえらくマイナーなスポーツで、ある一国の人気競技ともいえないようなものだったらどうだろう。イチローも、たんなるマイナースポーツの愛好者、やけにうまい愛好者というだけで一生をおえる。もしも、サッカーが全世界的な人気どころか、ある国のある地方の伝統行事に過ぎなかったら、クリスティアーノ・ロナウドだって、たんなる近所の人気者だったかもしれない。
俺は、野球やサッカー、その他おおくのメジャースポーツ……、要するに、たくさんの注目と富が集まるスポーツについて、それがそれだけ人気のある理由というものをつきつめたところで、そこまで合理的な理由は見いだせないのではないかと思う。『バスカッシュ』みたいに、神話と繋がってるわけではない。たまたま、けん玉でなく野球だったし、たまたま、ハンドボールでなくサッカーだった。いろいろな偶然に左右される人間の歴史が、たまたまそうしてきた結果に過ぎないのだと。
この社会に合理的な理由なんてない
さらに想像の幅を広げる、この社会、俺が当たり前に、多くのみなが、まあどこか違和感があったり、おかしいと思うことがあっても、とりあえず受け入れてる社会というものも、いろいろな偶然に左右される人間の歴史が、たまたまそうしてきた結果に過ぎないんじゃないだろうか、と。今、ある能力その他によって巨万の富を得たり、政治的になにかを成し遂げたり、歴史的な発見をしたりする誰かも、たまたまちょっと違う世界では、せいぜい村の人気者くらいかもしれないし、下手をすれば、厄介者、邪魔者になっていたかもしれない。
……よくある、歴史のif、あるいはSF、ファンタジー異世界。野比のび太の射撃の才能。俺は、なぜかそれを、「けん玉の世界王者」という仮定から、想像してしまう。けん玉業界の人には悪いけれども。そしてまた、たぶんに現実逃避だのなんだのという気がしないではないけれども、この世のあらゆる構造なんてものは、なにかしらの偶然に過ぎないんじゃないかという思いがある。
偶然の境目にいる人たちのこと
133 ：カズヤ ◆1Np/JJBAYQ ：2009/06/25(木) 21:28:40 id:k6xdjhx8Q (フルブラウザ)
http://hamusoku.com/archives/25431.html
マジレスするとHNMLSなんてのは遊びじゃないんだよ
仕事と同じやる気ない奴はイランし仕事だから平均12時間はインしてもらわないと駄目だ
あんたらはネタのつもりかもしれんが俺らは本気
突き詰めると命かけてんだよ
その辺はリアルと同じ会社員7年やってればそれなりのこだわりができるだろ
それと同じ俺らは７年考えぶっ通しでやってんだ
外野がごちゃごちゃ抜かすなよ
モンスターの出現時間に人間が合わせて活動するため、リアルから見た活動時間は不定期であり、明け方や昼間の活動もある上に長時間に渡る事も珍しくない。このため、HNMとは無縁の大多数のプレイヤーからは、羨望と同時に奇異な目で見られることが多い。それゆえ「廃人やニート専用」という偏見を持つ者も少なからず存在する。
HNMLS/FF11用語辞典
男は仲間３人と共謀し、８年前から船橋市や八千代市、市川市などでひったくりやオートバイ盗など約１千件を繰り返しており、被害総額は７３００万円にのぼる。男はひったくりの技術が巧妙で、仲間の間では「神様」と呼ばれていたという。
http://www.asahi.com/national/update/0819/TKY200908180388.html
……たまたま、なにかがちょっぴり違っていれば、彼らがロナウジーニョだったかもしれない、バラク・オバマだったかもしれない。
べつに俺は、それを斟酌して、彼らにバロンドールの栄光や、大国の大統領という地位を与えるべきだとかいうつもりはない。俺が、猫の体からノミを捕まえて、右手と左手の親指の爪でそれを潰すことが得意で、ひょっとしたらインターハイに出られるくらいだったとしても、べつに俺にインターハイ出場アスリートなみの自慢をさせろということでもない。
ただ、なんというか、人間の歴史なんてのは、偶然に過ぎないだろう。空飛ぶスパゲティモンスター教団はそう考えないかもしれないが、やっぱりこの星の誕生から人類の誕生、だいたいこうなってきた偶然だと、俺は思う。根底のところで、そうだと。この世のあらゆることは偶然にすぎないから、なにかの必然を予見しようと努力したり、なにかの原因を考えてのちに活かそうということは、まったくの無駄だ、というわけではない。部分的に、意志の力で、なにかをなす事もできる。それが尊いこともある。ただ、根底のところで偶然、俺が生まれたのも偶然、あなたも偶然、そうじゃないのか。
この世の横道を抜け出して
で、そう考えたらなんなのか、ちょっとわからないところがある。ネトゲーにものすごい才能のある人に対して、「世界が違えばよかったのにね」といって、それで終わりなのか（ゲームやなにかが「リアル」である異世界へ……というのも、ひとつのステロ・タイプか）。終わりなような気もするが、でも、どうも俺は、そこにこの現実の、「リアル」の裂け目を見ることができるし、下手すれば、二重の現実があるんじゃないかというような、そんな気もする。ただ、その裂け目を見たところでどうかといえば、なんともいえないところがあるが、ただ、この世の、この全てが、あまりにもひとつであると考えるよりは、起こらなかった歴史、起こらなかった「リアル」を考えた方が、実際には、この世の、この全てが、ほかにいっさい選び取りようのない一本道だったとしても、我々が、ただ自由を、この世の、この全てからの自由をえることのできる、たったひとつの、幸福へといたる道ではないかと、そのように思うのだ。
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