ぼくはブックオフで、ふだん見ることのない棚を見ていた。健康や身体、スポーツに関わる棚だ。なんとはなしにはじめてしまった自転車趣味だけれど、ぼくは自分の身体を使うことにまったく無自覚なままに生きてきて、これではいけないのだと思ったのだ。こむらがえり、転倒、打撲、筋肉痛。ぼくはその予防も対処もまったく知らないままだった。これでいくら1日150km走れるようになったといっても、つづけて走ったりすることはできないだろう。そのうえ、なにか身体に悪いかもしれない。そんなことを思ったからだ。
さて、ブックオフの健康や身体についての棚だ。なんというか、とても雑然として、とてもおもしろい。理系知識の乏しいぼくでも、「これは偽科学だろ」としか言いようないものから、「いったい誰が買うのだろう」というような真面目な医学の本まで混じっている。
そんななか、見覚えのある名前が眼に入った。糸井重里、とある。なにやらかわいい装幀でもあって、ふと手にとって、ぱらぱらめくってみた。そして、ぼくはこの本を買うことに決めた。以下の写真が、その理由だ。
「喪中につき年末年始の〜」のお知らせを、チョキチョキ切って栞にする人間がいる。裏がえせばちゃんと官製はがき、だれかから送られてきたものだろう。しかも、よく見れば字ににじみがあって、印刷されたものじゃないのだ。だれかが、筆か筆ペンを使って書いたものなのだ。
これには意表をつかれた。これなんてライフハック。ひょっとしたらデスハック。おもしろいじゃないか。ぼくはもう、なんども喪中はがきの切れ端をうらがえしたり表にしたりしながら、「店員がこれに気づいて抜き取ろうとしたら、どうしよう?」などとまで考えた。まあ、ブックオフの店員はそんなことしないのだけれども、ぼくが105円出してこれを買う理由は、すでにありすぎていたのだった。
以上、ぼくがこの本を買った理由だ。ぼくはまだこの本を読んでいないし、興味がないわけではないけれども、いつ読むことになるかはわからない。
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