はじめて修理、点検してもらうのこと


 こないだの三浦半島一周の帰り、ギアがおかしくなった。そのあと、なんとか自力で直せないかと、前後ディレイラーをいじりまくり、ついにはまったく回復の見込みなしになった。しょうがないので、フロントディレイラーの位置じたいをずらすという荒行で、なんとか走行できるだけの状態にして、自転車を買った店に持って行った。ついでに、定期点検というか、不定期点検もしてもらおうか。まだ一年経っていないけれどもこないだようやく2,000kmも超えたし、いい機会。
 「すみません、ギアが入らなくなっちゃったんです。それと、点検おねがいします」と俺。
 「ああ、ここいじっちゃったんですか。これはなかなかなおんないんですよ。お、いいサドルつけてますね、どうですか?」と俺のタイオガスパイダーツインテールちゃんをぐにぐに触る店員。
 「あ、俺のタイオガスパイダーツインテールちゃんをぐにぐにしないでください」と俺。
 「これ、150gくらいですよね、ほしいんですよ」と俺のタイオガスパイダーツインテールちゃんをぐにぐに触る店員。
 「ああ、俺のツインテールちゃんがぐにぐにされてる……!」
 ……というようなやりとりはなかったのだけれども、ベテラン仕事人が請け負ってくれたのでひとあんしん。そのときはタイミングもあって、預けて会社に帰って、夜取りに行った。
 それで、そのベテラン仕事人はいなかったのだけれども、売り場のお兄さんいわく、ディレイラー全部バラしたとかなんとか。それと、整備もしてくれたとのことだった。
 で、驚いたのはその直後。店内で、自転車押してるだけでも、タイヤの転がり方が違う。なんかこう、しっとりとしていて、なおかつ滑らか。「あれ? なにこれ?」。
 でもって、それに跨って、ハイヨーとこぎ出せば、お前、なんかもう溜息出るわ。よくわかんねーけど、なんだこの転がり方というか、進み方というか、推進というか、しっかりとしていて、それでいてしなやか。なんかこう、最近感じていた、というか、感じているのに感じていることに気づいていなかったガタつきがすっかりおさまって、新車? いや、新車というよりも、もっと慣れているというか、なんというのか、よく整備された自転車、という感じなのだ。
 いや、よく整備していただいた直後なのだから、そのままか。まあ、そういうわけで、ニヤニヤしたり、溜息ついたりしながら、無駄に10km以上走って帰宅したのだった。なんかもう、はっきりいって当分ロードとかいらねー、くらいには思った。このタイヤ、この自転車、こんなによかったのか! と思った。
 というわけで、自転車はたまに、不定期でなく、定期的にプロに見てもらうのがいいと思った。費用もそんなにかからないし、これはパーツをどうこうするよりも優先なのだった。もちろん、自分でできるようになるに越したことはないだろうけれども、この良い乗り味というものを覚えないことにははじまらない。
 ああ、しかし、何をどうしたのか、さっぱり聞けなかったのが残念だ。俺だって、日々ちょこちょことメンテナンスしているし、ドヤ系のおっさんにほめられるくらいはピカピカにしてるつもりだ。じっさい、職人にも空気圧や油あたりで注意はされなかったし。
 うーん、じゃあなんだ。まさかすごいばらしてグリスをどうこうしてくれたということはないだろうし、そういう痕跡もない。なんだろう? いろいろ締め直したのかな? たとえば、俺など締め忘れているか、締めすぎみたいなところだろうし、適正なトルクとかいうので締めたりしたのかな? ああ、まったくよくわからない。わからないけれども、ともかく、ちがったんだ。わけがわからない。まったく自転車は奥が深い。
 あと、引き取るとき、自転車専門でなさそうな店員さんに「整備の者が言っていましたけど、お客さんそうとういじってるそうですね」とか言われた。おお、マジ? でもなんだ、そうでもないような。そうなんか? でも、やっぱり足回りとか、ブレーキとかを交換しねえことには、まだまだというような気もする。でも、青いタイヤに革のクリップ、ストラップ、ごちゃごちゃいたハンドルのあたり、ちょっと見た目は気に入りつつある。悪い気はしない。まだしばらく、俺はGiant Escape R2だ、たぶん。

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