田原成貴の三つの聖痕

 京都府警が、覚せい剤取締法大麻取締法違反容疑で、日本中央競馬会(JRA)の元騎手で元調教師の田原成貴容疑者(50)を逮捕していたことが22日、捜査関係者への取材で分かった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091022-00000524-san-soci

 た、田原! おまえ、清水成駿公式サイトの清水のコラムによれば……いや、家族のことは書くまい。しかし、まあ、やめられないものなのか。そういうものなのか。いや、まだ逮捕の段階だ。しかし、こうやって名前が出てしまい、俺はすこし悲しい。
 ああ、田原、田原、天才田原。お前は天才だった。華のある男だった。忘れもしない、いくつもの光景。

あの洛陽ステークス、フジワンマンクロス

 スタートを切ると、大外枠のフジワンマンクロス、そのまままっすぐ走っていったんだ。他の馬が内へ内へと進路を取るなか、まっすぐ、一頭、孤独に、他馬と関係なく、ただ、前に向かって……!
 かかり癖のあるこの馬を、そんな風にして、この男は勝たせた。俺はそれ以来、そんな競馬を見たことがない。ホワイトシャンスがただ一頭、荒馬場の最内をついたことはあった。そんな光景は何度か見た。ただ、田原成貴とフジワンマンクロスみたいな競馬は、見たことがなかった。いや、見たとしても、俺にとってのそれは永遠に田原とフジワンマンクロスのものなのだ……!
 しかし、それにしてもこの洛陽ステークスのメンバーはすごいものがあるな。たんに重賞馬がごろごろしているというだけでないなにかがある。オースミタイクーンエルウェーウィンオグリワンメイショウテゾロとタイブルースとニホンピロプリンスケイウーマン、アルファーキュート、そんな馬を一度にまとめて負かすというのは、すごいものがある。
 

ワンダーパヒュームファイトガリバーオークス

 もっと、大きなレース、そこで田原が見せた腕といえば、俺はオークスを思い出す。マックスビューティの現役は知らない。ワンダーパヒュームファイトガリバーオークスだ。
 それぞれ、ダンスパートナーエアグルーヴに負けている。それは事実だ。しかし、俺にはどうも、この二頭をオークスで上位に持ってきたということが印象深い。どっちも、距離不安説がささやかれていた馬だ。それを、後方待機からの直線勝負で持ってきた。そこがすごい。脚を溜めて、溜めて、最後に一気に使う。まるで、テレビゲームのようだ。しかし、現実はテレビゲームではない。それなのに、この男は二年連続で桜花賞に勝って、二年連続でオークスの上位にそれらの馬を持ってきた。俺にはそれが神業に思えたのだ。

 ……と、この調子でやっていくと、あと二つくらい書くことがありそうだけれども、まあいい、またいつか思い出すこともあろう。しかし、この田原という男が、調教師向きだったかどうかわからぬが、しかし、ともかく、競馬界は得がたい人間を失うことになった。俺はそう思ったし、今も思う。正直、タヴァラ(笑)である面もいなめない。しかし、それを含めてのことだ。第二の田原成貴、そんな騎手は出てこないものか。それはもう、第二の大塚栄三郎を板前出身的な意味で望むほどむずかしいことかもしれない……!

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