流星群症候群

夜空に星が流れるオリオン座流星群が今日ピークを迎える。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091021-00000569-san-soci

 まだ鎌倉の実家があるころのこと。なにやら「流星群」というものが話題になった。そのとき俺は何歳? たぶんもうニートになっていたころ、20歳前後のころ。なにやら何十年、いや、何百年に一度というじゃないか。古代の書物では、地上が天に引き寄せられるほどの流星だったというじゃないか。
 俺はもう、なにがなんでも流星群が見たいと、そう思わずにはおられなかった。そこで、夜空を見上げるために、セーターにダウンジャケットを着込み、座布団に毛布、それに無線LANカードを挿したノートパソコン(黒いPowerBookG3だった)、水筒に熱いコーヒーを入れて、窓を開け放ち、屋根の上に出たのである。鎌倉はあんがい夜空もきれいだ。
 そして俺は、寒さに凍えながら、一大天体スペクタクルを待った。雨のように降り注ぐ流れ星だ。だが、なかなかそれは訪れない。ただし、空をスッと切り裂くような、そんな流れ星を何度も見た。考えてみれば、流星群どころか、俺は流れ星も見たことがなかったんじゃないのか? ああ、流れ星、すごい!
 あちらにスッ、しばらく待って、待って、もうないのかと思っていたら、こちらにスッ。俺はもう、屋根の上から離れられなくなった。PowerBookからはふだんはあまり書き込みを行わない2chにアクセスし、同じことをしている暇人たちの書き込みを見て、さらには珍しく書き込みもしたと思う。また、東西南北という適当な振り分けに、それぞれいくつ流れ星が見えたか、手元のSimpleTextに打ち込みもした。それでも、PowerBookの温度計は、えらく低い値を指していた。なんで世の中の人は寝てしまっているんだろうと不思議に思った。
 やがて空が明けてきて、江ノ島の方に朝焼け。月も見えてきて、それでも俺はすっかり明るくなるまで屋根の上にいた。俺は満足した。俺は一生分の流れ星を見たと思った。もう、俺は一生流れ星を見る必要がない。そうとまで思った。

 ……と、思いきや、なぜかね? なんだかわからんが、俺があの流星群の夜を迎えるまで、ほとんど話題にもなっていなかった流星群が、毎年の風物詩みたいになっているじゃないか。百年、千年のスパンではなかったのか。まったく。
 それで、もう、俺は、なんとなく、「俺は一生分を見たし、あの大火球も見たんだ」などと思って、あえて流星群を見ようとは、見るために、どこか外へ行こうなどとは、もう思わないのである。

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 ……俺はこの話をすっかり一度書いたことを途中で思い出して、最後まで書いた後に前のと見比べてやろうと思った。が、それらしい記述はなく、流星群と打って引っかかるのはこの三つだけだった。