自分もむかしかいじゅうだったんだろうか? 『かいじゅうたちのいるところ』

かいじゅうたちのいるところ [DVD]

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 よくラジオでかかる曲があって、それがこの映画のテーマ曲だった。

 それで、借りてみて気づいたが、原作の絵本に覚えがあった。
かいじゅうたちのいるところ

かいじゅうたちのいるところ

 とはいえ、絵に覚えはない。本を持っていたわけでもない。小学校の授業で読み聞かせられたのだ。先生がカバーを白い紙で隠した『かいじゅうたちのいるところ』を読む。それをもとに想像で、自由に「かいじゅう」を描けという課題だった。俺は変態的な形態とサイケデリックな色使いで「かいじゅう」を描いたように思う。とはいえ、「かいじゅう」という響きに引っ張られ、いくぶんかウルトラマンの怪獣っぽかっただろうか。
 結局、種明かしというか、答え合わせのようなものはなかった。それでいいと思う。ただ、あるとき、先生の机の上に例の白カバーを見つけ、パラパラとめくったのだった。そこで見た「かいじゅう」は、なにかもしゃもしゃしたやつであって、「いや、俺のやつのほうが面白いだろ」と思ったのだった。
 それはともかくとして、映画『かいじゅうたちのいるところ』である。ファンタジー映画というには、なにかこう、リアルというのか、距離感がドキュメンタリ的なタッチではじまる。主人公の男の子は文句なくかわいい。おそらく精神科にかかればなんとか症候群とか名付けられる感じの暴れっぷりがいい。それで、そこのところの背景みたいな、家庭事情みたいなものが垣間見えて、「かいじゅうたちのいるところ」がいかにも精神世界的に見えてしまうという作りになっていて、なかなかに重い。うまく言えないが、It's love.っていうときに、そのItが肯定的なものとは限らねえよな、というような。あとはもう、砂漠や海岸のシーンの色合いなど好みだった。おしまい。