アニメ『フラクタル』を最終話まで見た。なんというのだろうか、モヤモヤとしたまま終わってしまった。見る側としての不完全燃焼というか、そういうところがあって、最後の最後でやっぱりそう思ったのは、「神さま」の姿を主人公達が見るところ。この世界のシステムを造る礎となった、昔々の神さまの姿。それは……って、言ってしまえば、普通の日本の16歳の女子高生なのだけれども。
こう、なんだろうね、2011年のこの世界とは大きく姿を変えた遠い未来の世界、国や人種や文化も今のものとはまったく違っている世界、そういういわばファンタジー的なところから、女子高生への落差みたいなものがあるわけじゃん、本来は。そう、本来は。いきなりSF、ファンタジーの世界から、こちらがわの日常に飛ぶときのゾクゾク感。まあ、SFにありがちといえばありがちだけれども、それでもやっぱりなんか結構キック力あるもんだと思うの。
でも、あんまり『フラクタル』にキック力なかった。俺は正直、そう思う。それで、ほかの、彼女らがクローンであるとか、主人公から見て寝取られていたとか、あるいは肉体と魂の分離であるとか、そういうのもみんな、どうもあっさり出てきたなという印象があって。なんかもっと、こう、神さまでいえば、見ていて「神さまってどんなんだろう?」って想像させておいて、これか! みたいな、そういう落差があればなぁ、とか。
それで、なんか見ながら思い出したのが、松本人志のドキュメンタリだった。話術についてこんなことを言ってたのだ。
「ちょっと七並べに似ているかなとは思いますけどね。どこを止めとくかという感じ。最後のカードはどれにすんねんっていうことですよね。最後のカードを切ったときが一番大きい笑いが生まれるときでないといけないわけですから、一般の話し下手な人は、カードの切り方というか、切り札を間違えているような気がしますよ。それ、そこで言っちゃだめでしょっていうかね。かと思えば、あえて一発目これ切っちゃうみたいな。あえてこれを見せといてとか。どの順番までこのカードを持っているか、結構七並べに似ている感じが僕はするんですけどね」
第143回 松本人志スペシャル(2010年10月16日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀
これを見たとき、「これは笑いに限らねえよなぁ」と思ったのだ。いや、なにか創作をする人にとっては当たり前の話なんだろうけれども、ああ、そういうもんかと、すげえ納得するところがあったのだ。あと、関係ないけど、この『仕事の流儀』は面白かったけど、コントの方はぜんぜん笑えなくてどうしたものかと思ったが、それは別の話。
で、七並べでどっか止めてるとかいえば、たとえば『Angel Beats!』なんかは、もちろん天使ちゃんマジ天使とかオープニング曲のすばらしさとかはあるにしても、あの世界の謎というところがずっと伏せられていて、そこんところのフックはけっこう強かった。結果としてどうだったかというと、それはともかくとして。『エヴァ』なんかはそういう謎の組み立てとか、明かし方とかが相当に強かったといえるかもしれない。あるいは、たとえば週刊連載時の『ドラゴンボール』の次週への渇望感というのを思い出せば、こう、うまい具合に鳥山明が止めていたんだじゃないかとか、続きもの全般にそういうところもあるのだろう。
それでもって、やはり思い浮かべずにはおられないのが現在絶賛放送中止中の『魔法少女まどか☆マギカ』。これはどうだろうというと、これはもううまい具合にカードが止められてて、来るたびにどっかんどっかんというところではなかろうかなどと(このあたりは七並べの比喩はしにくいが)。
ただ、現時点で、QBの正体、ほむほむの正体、このあたりがオープンになってしまってはいるのだ。わりかし開いてしまっているといっていい。いや、言えるのかどうか。我々が他でもない「今回」を見ている以上、今までほむらが見てきたものとは違うものを見るに違いない。果たしてそれはなんなのだろうか。それとも、無限の回廊に落ち込むのか、やはり興味は尽きない。
魔法少女まどか☆マギカ 1 【完全生産限定版】 [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: アニプレックス
- 発売日: 2011/04/27
- メディア: Blu-ray
- 購入: 49人 クリック: 2,703回
- この商品を含むブログ (348件) を見る