- 作者: 山本譲司
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さて、『続』、だ。刑務所の後、のことだ。出所後、義父母の家に身を寄せ、選挙民や支援者の目に怯え、けれど、福祉の現場に職を得て、『獄窓記』が評価され、全国の刑務所長の集まる前で講演したり、国会に呼ばれたり、ついにはPFIの刑務所運営に関わりと……。
なんというかその、サクセスストーリーというか、立志伝というか、そういうものを読んでいるようになってくる。失意した!→反省した!→道が開けた! の繰り返し。これは前も感じたところだが、「やっぱりこういうバイタリティと運を持った人間が政治家というものになるのか」という……なんつーか、まあそんなもんだよな、みたいな。
あと、やっぱりなんかこう、奥さんの家も裕福なのだろうし、切羽詰まった感もねえよな。それで、たとえば義父母との会話でも刑務官に対するような「はい!」という返事をしてしまうとか、刑務所見学に行ったとき、つい行進の号令に体が反応しそうになるとか、そういったエピソードもあるんだけれども、そんなに多くもなく、というか、出所後の世間に対する引け目とか、引きこもりなるくらい追い詰められたところとか、そんなにすごい調子で迫ってくるところもなく、そりゃご本人の中じゃすごい精神状態だったのかもしれないが、どす黒い感情や狂気が溢れ出してくる感じもなく。
……って、そういうのを求めるべき本ではないです。というか、俺は「政治家に求められるような資質的なもの」に忌避感があって、あるていど私小説に書かれているからそんなふうな読み方もしてしまえるのであって、そこんところで鼻白んだところがあるというだけであって、山本さんの仕事はすげえいいと思うのです。それだけは言い切っていいんじゃねえかと思うのです。いろいろおかしい日本の警察やら裁判というのものがまずあって、自分がなんでそこにいるかもわからん人を刑務所に入れてなんの意味があるのかわからんし、刑務所なんぞないにこしたことはないがそうもいかんうちは、やはり福祉最後の砦であってはならんという気もするわけなのです。
まあしかし、刑務所話を好んで読むわりには、「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」のこと知らんかったりして、勉強不足だなとか思った。将来お世話になるのかもしらんのに。
いや、なんだろうね、希死念慮と同時にいつからか頭の中にある刑務所願望。俺はもう、人間組織、制約、決まりごと、命令、そんなものから圧倒的に自由になりたいというのに、真逆の世界を望んでいる。このあたりは精神分析みたいな領域かもしらんし、俺に俺のことはわからん。わからんが、少し思うに、あまりに散漫でとりとめがなく、落ち着いてられないこの性質というものを、どっかに縛り付けておきたい。落ち着かせておきたい、そういうところがあるのかもしらん。余計なことは考えたくない、なにも考えたくない、脳みその半分かそれ以上いらない、俺は気が散りすぎている……。
あとは、ちょっと前にも書いたゼロからのやり直し願望。もう、完全にこのくされ脳みそをふっ飛ばして、ハイターで消毒して、まっさらに漂白して、もう少しましな人間になりたい、この容器はあまりにも苦痛だから。
なんてことを、この本を、たくさんの知的障害者やもっと思い心の病気を持った人間が出てくる本を読んだ後で言えるのか? って、言ってしまっているし。しかし、何度も何度も何度も書くが、こんなことを刑務所に求めるのはお門違いだし、現実の刑務所は俺が考えているようなところではないだろう。受刑者の悩みナンバーワンは「人間関係」だ。刑務所の塀の内外くらいで、娑婆とそうでないところを分けられるはずがない。
ああ、しかし、俺もどこかのPFIで運営されている「社会復帰促進センター」などに行けば、もう少し社会に適応できるようになるのだろうか。この世に居場所を見つけることができるようになるのだろうか。違うとわかっていても、いくらそれが誤りだとわかっていても、そっちの方から希望の光が射すように思えてならない……。
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ただ、葛西明(不動産ブローカー)という名義で書かれたルポ"新宿のホームレスはムショ仲間だった! 「ポリバケツの中に首を突っ込んで餌を漁るなら刑務所へ行ったほうがまし」―ムショとホームレスと精神病院を往復する人々の行き場のない人生!"は、女性知的障害者ホームレスの話とか突っ込んで書いてたり、自らを知的障害と認めたくないがために福祉援助の道を開こうとしない人の話なども出てくる。ラストはこう締めくくってある。
刑務所が唯一、彼らを受け入れるということで、福祉施設化しているのではないかと思わざるをえないのである。
囚人狂物語―殺人犯から銀行員まで―みんなのムショ体験 (別冊宝島 (361))
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