- 作者: 吉本隆明,中沢新一,梅原猛
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1998/12
- メディア: 文庫
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でも、対談形式みてえのだから、ものすごい要約っつーか、一応の確認程度でサラっと述べられているところから、なにかしらざっくりしすぎたざっくりさを掴むとか、そんなんのピンを刺しておいて、そのうちピンとくるときがくればいいね、みたいな。
それで、「日本人は思想したか?」ってことなんだけど、まあようわからんけど、歌論であるとか、能であるとか、茶であるとかそういう具体的なところはやけにやってきたけど、世界水準の「哲学」みてえなところでは西田幾多郎からでしょみてえな。って、なんか最初の章から最後の章までぶっ飛ばすとそういう感じを受けました。
間ではだいたい、古代の話とか柳田国男とか和辻哲郎とかアイヌのこととか話してたり、あとは仏教、これの話。こないだ読んだ明恵対法然(日本仏教最大トーナメント開催! ~法然対明恵~ - 関内関外日記(跡地))の図式についても語られていたりした。
明恵の言い方でいうと、『選択集』というのはいったい何だ。どういうことが眼目になってくるかというと、法然が全部言葉にしちゃったと言ってると思うんです。つまり言葉で念仏を唱えればいいというふうに仏教の教義をねじ曲げたというか、上っ面にしちゃってる。信の心があって、それがおのずから言葉になって出てくるというのが本当の信仰じゃないか。ところが法然上人は、言葉で言えばいい、念仏を唱えれば極楽往生まちがいなしと言ってる。それは全部、言葉にしてしまっていることじゃないか、という批判がたぶん理論的な眼目なんですね。
って吉本が。
そんで、中沢新一が、天台教学の本覚論、もともと衆生すべてに悟った如来が「ある」と言ってしまうところに、本来の仏教ではない要素があるんじゃないか、それが日本的じゃねえかみたいなことを言う。
いま言った明恵の法然に対する批判もかなり近いところがあって、本覚思想というのは存在することを存在すると行っちゃうわけですね。これは言葉にする方向へ突入していく道を開いて、それが果ては毛坊主まで行くんだと思います。ところが中観仏教的な正統では存在するということをテーゼとして立てないということですね。それを立てた瞬間にパラドックス論法でそれをやっつけていくのが仏教のやり方で、絶対テーゼを定立させない。明恵さんはたしか、華厳の大学者ですけれども、この仏教の基本的な姿勢に忠実だったんだろうと思いますね。だから彼は、実体論に突入しちゃうようなものに対しては『摧邪輪』の中でものすごく痛烈に批判して、学者風の正統の批評をしていると思うんですよ。ただ、そこに生じていることは、日本の宗教史の中でとても重要な問題があるんじゃないか。これは正統派仏教と、それから日本思想としての仏教のちょうど臨界点のようなところにあるんでしょうね。
と。
そんで、さらに中沢新一が渡辺照宏という仏教学者の説を紹介していて、そもそもヒマラヤ山脈の非アーリア系の民族が伝承していた宗教が、ゴーダマだけがガンジス川のほとりへ出かけて行って、そこでインド=ヨーロッパ語族の実在論理に直面して、その境界上に生まれてきたの仏教じゃないかとかなんとか。それだとしたら、仏教そのものに正統みてえなもんがあるのかみたいな。
どのへん読めばいいかわからんが。
しかしまあ、鈴木大拙なんかも、インド的なものが中国的なところを取り入れて、それが日本に伝わってきて完成したんだみてえな感じのこと言ってるし、わりあいサンスクリットのもとがどうだったとかいうより、そっちのほうがダイナミックでいいような気はする。って、鈴木大拙といえば、本書で梅原がこんなこと言ってた。
鈴木大拙ですら、最後はやっぱり国のために死ぬことだ、それが無だというようなことを言っている。そういうことも一切私は許すことができなかった。私はそういうものの批判者として登場した。
とか言ってたっけ。俺はひじょうに鈴木大拙が好きなんだけれども、なにかしら戦争中のことについてはあやしいところがあるな、みてえなのはある。というか、戦時下の本で「え、戦時下だったか」というような、わりとアクロバティックにやってんなみたいのは思ったことあるし、『妙好人』の中の妙好人の戦争賛美(日露だが)のあたりのあつかいとかさ。そのあたり、大拙門下(?)の物言いも妙にあれだしな。日本的霊性とか、わりと日本民族賞揚のところはあったかしらん。いや、そのあたりあれなら読んでみようか。でも、そんな優先順位は高くないな。もっと昔の話と、大まかな流れを今は知りたい。梅原の本も読んでみようか。
あ、そういえば原発だ。梅原は反原発論者らしいけど、吉本隆明は反・反核っつーか、これは1995年の本なんだけど、こんなこと言ったりしてんの。
その面の梅原さんのお考えは読んだりしてますけれども、僕は反対で、反原発ということに対しても反対です。その根拠はとても単純で、技術は必ず現在を超えると思ってるからです。原発は危険だぞ、危険だぞと言いながら、その危険がやって来るのは、日本のデータを取れば、少なくとも半世紀の間、日本が自分の原子力発電で人命に関わる事故はないです。戦争の原爆と、それから焼津の漁師さんの被曝しかないので、半世紀くらい人命にかかわる事故はないです。それから技術は必ず現在を超えるから、原発より有効でありかつ安全であるという技術が出てきた時には、必ず自然廃滅されるんですね。僕はそういう意味で、技術を楽天的に考えていて、エコロジカルな思想、反原発の思想に反対であると言ってきたと思うんです。
このあと、アイヌのイヨマンテの話とかに行っちゃうんだけど、しかしこれはなんか2012年の今読むと、どうも「安全厨乙」みたいな、楽天的すぎだろ、という印象がある。というか、それしかない。50年後くらいにはもっといい技術が、とかいっても、性質上「100,000年後の安全」になっちまうのは避けられないわけだしな、などと。でも、俺だって30年とすこし生きてきて、原発の印象というとシムシティ(火力より強いし、日頃の公害的にはむしろエコ。でもメルトダウンしたらリセット。だいたいあってるか。でも、現実はリセットできないし、廃棄物の問題は、少なくともスーファミでは出てこなかった)くらいなものだったけれども。けれども、知の大物で、しかも技術者出身がというあたりで、なんとも。
それで、東日本大震災以降、吉本隆明がどんな発言したか検索したら、こちらのページが出てきた。
うーむ、なんとも。まあ、歳も歳だし、とか、上から目線(下から?)とかで言えるレベルの人じゃねえだろけどさ。なんかこのあたりとか、オウムへの乗り方とかには乗れねえなって思う。アウトだろ。いや、こないだのインタビュー本で、「獄中の麻原からテレパシーを感じた」みたいなところまで行っててすげえなとかも思ったんだけど。なんか、擁護するわけではなけれども、田村隆一の晩年の詩、老いについての詩が思い浮かんだりもするわな。
でも、こんなことも言ってるの。
もうひとつ、自分の仕事の中でいまのことに関連することでやってきたのは、マルクスの考え方を普遍化した言い方で言うと、人間が自然に対して、あるいは外界に対してでもいいんですけど、手を加えるときは、必ず加えられたところに自然が全部、価値化していく。自然を価値物にしてしまう。つまり労働ということをただ働くという意味じゃなくて、外界に手を加えることに普遍化して言い直せば、手を加えたところから全部、価値化するという考え方です。これはエコロジカルな意味ではなくて、ちょっと息苦しいんじゃないかという感じを抱くわけですね。現在それから未来に対して、息苦しいんじゃないか。どこかで遊ぶという意味を、芸術でも娯楽でも文学でも何でもいいですけど、そういうものに例をとるとすれば、確かに価値を生み出しているには違いないんだけど、しかし同時に遊びであったり娯楽であったり、あるいは一時的な精神の解放ということです。それが文学とか芸術とかいうものの価値だとすると、マルクスの価値論は、拡張されなきゃならないんじゃないかというふうに思えるわけです。
とか、まあ、マルクスの価値論とかわかんねえけど、なにかしらこのあたりとかは最近の流行みてえな、なにかしらのなんつうのか、その、労働観の変化的なところに近くねえかとか、つーか、やっぱり言ってることはおもしれえよという気はするし(『悪人正機』吉本隆明・糸井重里 - 関内関外日記(跡地))。
つーわけで、まあ、まずともかく、それ以前に、俺に足りないのは『記紀』のこと、それ以前のこと、中世の物語のこと、さらなる仏教知識、神道のこと、柳田、和辻、西洋哲学、現代思想……いや、無理だ。やめだやめだ。だいたい、西田幾多郎とか読む気しねえし、だいたい哲学はわかんねえよ。だからちょっと、今日買った『ストライクウィッチーズ零』の二巻(普通版)を読んで寝るから。おやすみ。
ストライクウィッチーズ零 1937 扶桑海事変 (1) (角川コミックス・エース 338-1)
- 作者: にんげん
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ストライクウィッチーズ零 1937 扶桑海事変 (2) (角川コミックス・エース 338-2)
- 作者: にんげん,島田フミカネ&ProjektK
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/02/09
- メディア: コミック
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