ドキドキが止まらない


 恋しちゃったんだ、っておれは本当は単発の女子中学生なのでって、単発の女子中学生っていうのはよくわからない。というか、すばらしいストライクウィッチーズのあれは双発なんだろうか、よくわからない。
 まったく恋とは関係ない話をするが、ドキドキが止まらない。というか、ようするにパニック障害とかいうものか、おれの主治医は病名で括りたがらないようなので(そうおれが察しているだけかもしれないが)よくわからないが、心身のなんらかの疾患によって動悸がとまらず、手に汗がにじみ、呼吸がうまくいかず溜め息が多くなり(逃げていく幸せは督戦隊が射殺する手はずだが、逃げる幸せもいないので彼らも手持ちぶさたである)、意識のあるすべての瞬間が不安にとらわれている。これは心臓がどきどきするから不安なのか、不安だから心臓がどきどきするのか、もうわからないし、ベンゾジアゼピン抗不安薬以外に処方されたアルマールなどもろに高血圧、狭心症不整脈治療剤なのだが、それももうなんか効かない感じが強まっていて、いくら飲んでも酔えないっていうか、酔っちゃだめだろみたいな。
 これはもう逆に意識の問題であって、意識や考え方、性格までは薬でどうにもならないと告げられてはいるが、眠気という副作用こそがおれの求める平安やもしれず、もっと頭を鈍麻させる、ポケーッとさせるような、そういう意味で強いヤツをいっちょお願いしますと、今度はそういう方向で行ってみよう。意識すること、考えることがすべての恐怖の根源だ。しかも、おれが感じている不安というのは、無根拠の妄想やなにかではなく、切実な日々の生活、絶望的な今後の人生であって、これに対して楽観的な計画書はどこからも提出されない。また、これも薬や医者の領域ではない。大きくは経済の問題だろうし、小さくはおれの階級や労働者としての性能の問題である。おれはもう頭を鈍麻させなければ不安で死ぬのだから、労働者としての性能を向上させるのは無理な話である。
 あるいはもう、波紋法の使い手のように、心臓の動きが極度に遅くなるとか、止まってしまうとか、そんなのでもいい。改造ペニスのロボトミーになって、ナチスのお帽子被るのも悪くない。もうどうでもいい、どうとでもしろ。くそ、言葉だけならなにか放り投げてしまえるのに、この意識、肉体、全部不愉快だ。まったく常に不安で恐ろしい。怖い。不安だ。脳味噌も心臓も大嫌いだ。壊してしまいたい。もっと重症のやつもいるだろうが、そんなのは知った話か。優越感で安心できるくらいなら、こんなんじゃないんだ、そんな問題じゃないんだ、おれの、おれだけの抱える、おれの話なんだ。もう、わけがわからない。第9軍はどこだ、第9軍はどこにいる?