もう一つ二つピアス穴を開けたい

 これといって洒落にならないエピソードもない左耳たぶのピアス。はじめに一個耳たぶに開けてから、じつに十年近く経って軟骨(ヘリックス)に二つ開けた。去年のことだ。
 耳たぶに一つ、というのはいかにも中途半端な気がしていた。色の入っていない刺青みたいな、なんにか半端もの、という感じがしていた。どうせならもっといっとけよ、と。でも、痛いの苦手だから放っておいた。
 それでついにねんがんの追加穴を開けたぞ、なのだけど、どうせならもう一つ二つ、という気持ちが芽生えてきた。いや、芽生えというほど強くはない。球根が土の中に埋められたくらいか?
 というのも、今度は「どこに?」というところでわからない。前は左の軟骨に二発、というのが明確に見えていた。今度はわからない。普通にいけば右耳かもしれない。でも、なにかよくわからない理由で左右対称にはしたくない。右の耳たぶにはしたくない。右軟骨に二発? そうすると、どうしても耳たぶも埋めたくなってきそうな気がしないでもない。それは望まない。
 かといって、もう左耳はいっぱいだ。耳たぶはど真ん中に一発だから、これ以上は窮屈。というか、小さなでっぱりとか(トラガス?)とか耳掃除するの邪魔そうだし。
 と、じつは一個開けたい場所があって、それはずばり舌なんだけれども。舌を出したらそこに銀色の球がのっかっててレロレロ動かしたりしたら楽しそうじゃん。なんか、この上ない雑魚っぽさ! しびれるゥ!
 でも、なんか飯食うのに邪魔そうだし、口内を清潔に保ちたいというのは大いにあるにしても、そこまで面倒見られるのか? という気もする。
 というか、サラリーマンがいきなり舌出して相手を威嚇するシーンとかあるのか? レロレロすんの? クライアントからアッパーカット食らって、なんかおもしろい擬態語放ちながら吹っ飛んだりすんの? それはそれで悪くないが、そういうシーンに巡り会える宇宙には住んでいないような気もする。では、来世にでも。