このところ髪が黒い。真っ黒だ。
年明けから少々忙しく、染めるのも散髪もサボっていた。ようやく髪を切ってみたら……真っ黒だった。
おれは鏡を見る……もう中年だし、黒でいくか、と思った。髪は真っ黒だが、あごひげには白いもの……正確には金色に近い……が混じり始めている。いつまでもいきがった高校生みたいな髪の色をしてるんじゃないよ、ということだ。
……と、決心してから一週間は経つが、いっこうに慣れない……鏡の中自分に違和感がある。なんか忘れていませんか？ という気になる。頭が重苦しいように思える。耳たぶと軟骨に二つ、三つのピアスが妙なものに見える。それも妙に重苦しく思える。
そもそもおれのハンドルは、おれの髪の色に由来する。
嘘だ。
嘘だが、唯一ネットとリアルを繋ぐ意味で金髪にしてきた。
嘘だ。そこまで金色という激しい色には……してこなかった。ちょっと軽くする程度の……。
あごひげの代わりに、頭から勝手に金髪が生えてこいよ。というわけにはいかないか。むしろ、気にするのは抜け毛の類？ 今のところその徴候すらないが……父系の血が出ればハゲる、母父の方の血が出ればハゲぬ。こういうことは、あまり気にしたくない……気にしたくもなかった。いつまでも若いつもりでいるということだ。
中身がてんでいきがった高校生みたいなものだから、外見もそれでいいじゃないか。今さらまともな勤め人？ サラリーマンになれるわけもなく……そんなものになれぬと思ったからピアスなどしているのだが……。
とはいえ、十数年ぶりの黒髪というのは……選択肢の一つとして「珍しい」わけではある。違和感を楽しむというのも……悪くはないか。
もっとも、おれの髪が何色だろうと……あるいはスキンヘッドだろうと……問題なのはその内側に黄金があるかどうかなんだ……。発掘される可能性は……見込み薄だ。せいぜい薄毛の心配でもしておくべきなんだ……。
