美しきドス修羅場! 〜『女渡世人 おたの申します』を観る

女渡世人 おたの申します【DVD】

女渡世人 おたの申します【DVD】

人を斬ったという噂
 賭場を割ったという噂
女だてらに日陰に咲いたこぼれ花
 ながれる先は
 なぜ、なぜ、いつもドス修羅場

 ■こんな映画を映画館でみたら、「フハー」と息を吐きながら帰り道を歩くことだろう。いやはや。
■脚本・笠原和夫の本で、本作のラストシーンについて何度か述べていた。曰く、「ここは自分に撮らせてほしい」と。それに対して監督が好きにすればいいというのだが、これはいかんとやはり監督に任せたら凄まじい出来だったと。むむ、たしかに。しかし、なにより演じている藤純子の表情!
■表情といえば、立ち回りで金子信雄を追う時の目! 怒りとともに、どこか恍惚の表情でもあり、狩りをする獣のようでもあり……!

■しかし、冒頭は手本引きのシーンから始まるが、やっぱり動画を見てもどんなルールでなにが行われているかさっぱりわからん! ただ、ルールはわからんが、男が負けこんでいくさまははっきりわかる。博奕怖い! あと、笠原和夫は「手本引きを知的ゲーム、文化として残したい」みたいなこと言ってたが、なかなかむつかしそうだ。けど、西原理恵子がやってたとかいう話してたっけしてなかったっけ。まあ、iPhoneのアプリにないか探してみた現代っ子のおれだけれども、そういうものはなかった。だれか作ってくれ。
■なぜかメモを残していないが、笠原和夫は「女任侠ものこそが任侠映画の本流」くらいのことは言ってたと思う。男は卑怯で弱く、どうしようもないもんだ、みたいな話だ。実在ヤクザの取材を山ほどしてきた人間の言うことだ。そういう先入観で見れば、女渡世人が腹をくくったところの、恐ろしいほどの強さに圧倒的な強さを感じずにはおられない。それはもう、本作の菅原文太の強まり具合より、さらにもっともっと強いものだ。
■女性が強く描かれているいえば、あの場末の女たちの生きる姿もそうだろう。宮崎駿が描くような感じ。あるいは、なんだろう、ここのところの記憶から想起されるものといえば、若松孝二の『千年の愉楽』だったり、小説『苦海浄土』だったり、なんといっていいかわからぬが、そういうなにかだ。
■まあ、小難しそうなことはどうでもいい。『日本暗殺秘録』じゃあないけれども、凄まじいテロルをやってのける女渡世人、それに絡まる義理と人情、絡みあう絵図、ドス修羅場、いや、まったく面白かったぜ。ほいじゃあの。

>゜))彡>゜))彡>゜))彡

 わが国には大衆演劇のなかに<女剣劇>のジャンルがあって、根強いファンを持っている。藤純子の<女やくざ>はそれを銀幕に移して大成功した、という見方もできるが、制作の側の立場で言うと、やくざの<情感>は女を通しての方がより美しく、より効果的に書けるという手応えがあった。
 やくざに限らず、男の内側には、女以上に<女々しい>部分がある。<女やくざ>はその部分を自然に直截的に表出する。
 「お竜さん」が演じたものは、実は<男ごころ>そのものである。そこに人気が持続する秘密があったのではないか――。
 <女やくざ>こそ、やくざ映画の本流であった、とわたしは信じている。

 上でメモしていないとか書いたの撤回。もっと深いことを書いている。自分のうろ覚えなどあてにしない方がいい。