きり はなされた 世界


 昼休みコンビニを出ると、片手を腰に当て、背中を思いっきり後ろにそらせて、缶ビールのようなを飲んでいるおっさんがいた。しばらく歩いて行くと、べつのおっさんがレジ袋から缶チューハイを取りだして、プシュッとやると歩きながらグビグビやりだした。
 おれは酒が飲めない。飲めるけど、飲めない。薬との関係が禁忌だ。おれは薬をえらぶ。酒ときりはなされた世界に住んでいる。酒の世界、すばらしいものからろくでもないものまで、高いものから安いものまで、甘いものから辛いものまで、どこまでも広がる酒の世界。無縁なものが広がっている、のを知っている、のは空しい。
 無縁なものが広がっている、のを知っている、のは空しい。心の中に空虚がある。酒ばかりじゃない。おれは、金がないので自動車とも、海外旅行とも、一生無縁、無縁仏か無縁の鬼か、いずれにせよ、空しい。それにくらべると、酒など、おれの選択で、買えるものは買える、どこでだって、飲める。
 空は青い、少し汗ばむような五月の昼、路上でビールを飲む。死ぬまでには一度くらい、あってもいい。