深町秋生『アウトサイダー 組織犯罪対策課 八神瑛子III』を読む

 八神姐さんシリーズ、これが最後といいますから、じっくり読もうと思ったのですけれども、気づいたら剣道の小手の獣臭いトラックから散弾銃を撃ちまくる猛スピードで読み終わっていたわけであります。
 1で八神姐さんのクール&ビューティー&バイオレンスとその背景が提示され、2でちょっと日本離れしたような敵が出てきて異種格闘戦のような様相を呈し、さて3はというと、これが本筋の警察小説に着地してドンと最後を〆てくれた、というところなのであります。
 もちろん警察小説と申しましても舞台はロス・アンゼルス、もとい上野ですから、動物園から逃げ出したパンダの代わりに着ぐるみを着るはめになった富永署長が孤軍奮闘する一日を描いた……なんて話ではありません。昭和喜劇ですか? というか、この疾走感とめくるめく展開する暴力と腐敗の物語、どこまでネタを出してよいものかわかりゃあしません。どんでんどんと、二転三転七転八倒四苦八苦していく展開から目が離せません。まあ、昭和といえば『仁義なき戦い』の大友勝利みたいなのが出て……ちょっと違いましょうか。いや、しかし。
 ま、そこで皆様にお伝えるするのはスーパーセックスが凄そうだ、ということくらいなのでございます。時代も変わり、ヤクザも変わり、残ったのはスーパーセックスなのでございます。いや、そういう話でもございません。断じてございません、本当かな? 嘘かな? それはあなたさまの心の思うがままに。
 そう、心の思うがままにといえば、帯に「復讐のミューズ、最後の激闘へ」とありますが(つーか、作者が完結って言ってるじゃん)、もっと八神瑛子様が(いつの間に様?)が特殊警棒で殴ったり銃をぶっ放したり逆にぶん殴られたり銃をぶっ放されたりする(今回は後者が多かったかも)ところを見たいと、そう思うわけなのであります。前にも書きましたが、全身義体じゃあない、生身というにはちょっと強すぎるけど生身の戦う女なのです。どこかで世の中には一定の「戦う女」のファンがいるというじゃないですか。ま、わたくしもそうなのでありましょうが、また八神さんの活躍みてえなあと、そう思ったわけでございます。おしまい。