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おれのSFはカート・ヴォネガットの『チャンピオンたちの朝食』か、あるいはフィリップ・K・ディックの『ザップ・ガン』から始まる。SFに詳しい友人どころか友人そのものがいないので、それからはそれぞれの作家の別作品であるとか、おれでも知ってる大家の名作だとか、「ヒューゴー賞」とか「ネビュラ賞」とか書いてあるものを読んだ。べつに日本のSFを軽視したとか忌避したとかいう理由はなく、リンクがそのように繋がっていたのだった。
よって、おれは今さら神林長平を知り、そのライフワークともいえる『戦闘妖精・雪風』シリーズを読んだ。
予測、あるいは予断があった。タイトルからだ。戦闘機、戦闘妖精。パイロットをサポートする妖精型人工知能、そんなものが出てくるのだと思っていた。最近のSFアニメでいえば……、『革命機ヴァルヴレイヴ』のあんな感じ? だ。
半分あたっていて、半分外れていた。雪風はもっと完全にコンピュータだった。『翠星のガルガンティア』のチェインバー? もっと無機的。ここまでコンピュータとは思わなかった。
そしてストーリーときたらどうだろう。南極の超空間通路から地球に攻め込んできた未知のネウロイに対抗すべく、世界各国のウィッチたちが(以下略)。通路の向こう側のフェアリィ星にて「異性体」との戦いが繰り広げられる。
最初は主人公機がバリバリ戦闘する期待でなく高性能偵察機であることに面白みを感じた。味方がいかに危機に陥ろうと、死のうと、その情報を持ち帰るのみ。この設定。渋い。
しかし、その渋さがじわじわと違う渋さに移行していく。人間と機械、意識とはなにか、コミュニケーションとはなにか。これの哲学問答のようになっていく。後半二冊などそれで占められているのではないかというボリューム。対話につぐ対話。ただ、その対話そのものがジャムに対する武器になる、すなわち、この作品そのものがミサイルになって飛んで行く。そこが面白い。言い過ぎだろうか。よくわからないが、おれはそんな印象を受けた。
夢中になって読んだ。ただ、抜群の傑作と感じたかどうか自分でもよくわからない。あまりに切り詰められた記述世界は(そうである必要があるにせよ)、少しつかれる。3冊読み終えてみれば、3大奇書を読んだような気にもなる。もちろん、続きが出れば読むだろう。
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