〜蒸気船、山を越える(人力で)〜『フィツカラルド』

19世紀末のペルー。カルーソのオペラを聞きたいがばかりに、アマゾン川の上流にオペラハウスを建設しようとするフィツカラルド。彼の指示のもと、巨大な白い蒸気船が川を上り、山を越えようとする。
ドイツの巨匠ヴェルナー・ヘルツォーク監督の代表作『フィツカラルド』という映画を一言で言ってしまえば、妄想に取り憑かれたオペラ好きの自称実業家が、巨大な船で山を越える映画である。クラウス・キンスキー演じる妄想一代男フィツカラルドの姿は、現実に船が山を越えるシーンを撮影するため、デジタル技術もCGもなかった時代に、重量320トンの本当の船で実際に山を越えたヘルツォークの姿とオーバーラップする。

 Amazonにあったこの説明で全部だろう。おれには映画の娯楽性とか芸術性とかようわからんが、この作品はそれ以外のなにかを強く感じた。なにかといえば、土木性というか……。土木映画。ヘルツォーク、またもやの人海戦術、それに埋もれないクラウス・キンスキー、くっそ長いし、「飽きずに見られます」とは言えないが、山越えのシーンだけは、まあぶっ放してるなあという。パッケージの写真は幻想的だけど、実際のところ幻想的というより実際的というか、土木だから。
 で、本作でのキンスキーは、『アギーレ』や『コブラ・ヴェルデ』ほどキレキレな感じじゃなかったかな。どっかしら可愛らしさがある。怪優と言われるおっさんだけれども。それにラストはラストで救いがあるというか、ラストだけ言えば他に比べてもいい感じかな、とか。
 というか、なんでおれはこの映画観てんだろうというのはある。なんでって……、サッカー日本代表の監督がアギーレさんになったから、『アギーレ』観たからか。正直、おれはもっと気軽に楽しめる、笑える……なんでもいいが、不安の想念を殺してくれるやつを求めてるんだ。今期最高に好きなアニメは『さばげぶっ!』だ。ヘルツォーク観てる場合じゃねえんだよ。でもまあ、なんだ、くっそ長いけど見どころはあったな。観た記憶すら残らないありがちなハリウッド映画よりは……好きかな。うーん。で、ここまで観たら、あとは『キンスキー、我が最愛の敵』だな。うん。おしまい。

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