このはてなダイアリーの「記事一覧」を元に数えていった結果、私は今年、80冊の本を読んだことになるようです。まあ、いま読みさしの本もあるので、大晦日までには読み終えてしまうので、81ないし82ということになるかもしれません。ともかく、月にして6.6冊、1週間に1冊以上くらいのペースでしょうか。あと、言っておきますが、ほとんどが図書館で借りた本で、これについては弁解の余地もありません。自分には80冊の本を買う金がないのですから。
全体の傾向としては、年初に自分の精神疾患、すなわち双極性障害についての本をそこそこあたっていたようです。しかし鬱病(大うつ病)に比べると、双極性障害(躁うつ病)の本は限られてくる。とはいえ、まだ読んでないものがあれば、多少むつかしくてもあたってみたいという気持ちはあります。そして、この病気のことから「脳とはなんぞや? 遺伝とはなんぞや?」という興味につながり、一年を通してそういった理系の本をちょくちょく読みました。進化心理学の考え方など、わりと自分にとっては大きな発見であったように思います。もちろん、浅学菲才、とくに理系についてはさんざんの自分のわかったような気がする範囲での話ではありますが。
一年を通して、といえば、前半はセリーヌ全集に悪戦苦闘していたのが伺えます。これはわりと苦行に近く、読書の楽しみからは少し遠いところにありました。ただ、意地のようななにかによって読破したというところです。あまりメジャーな作家を読んでいない自分ですが、「セリーヌ全集は読んだがね」と言えるようになったのは密かなよろこびではあります。まあ、訳者たちが揃いも揃って「原文をうまく日本語にできるわけがない」みたいな代物なので、「原書だよね?」とか言われればそれまでですが。というか、そういう話相手がいないので、そもそもどうでもいいのですが。
また、全集というわけではないのですが、一年を通して読んだなぁというのが、リチャード・ブローティガンです。こちらはあまり苦行という感じはありませんでした。それよりも、自分の好きな高橋源一郎(あるいは村上春樹)のルーツのようなものがここにあるのか、という驚きがありました。自分のようなものがいうのもなんですが、もっともっと読まれていいんじゃないでしょうか。
また、年の前半は野尻抱介のシリーズ、年の後半は渡辺京二からの流れ、というようなところでいくらか関連づいた読書があったでしょうか。まあそんなところです。
そんなところで、今年読んだ中からベスト3を挙げたいと思います。べつに3つである必要もないですし、そもそも挙げる必要もないのですが……。
セリーヌ『なしくずしの死』
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やっぱり今年はセリーヌということで、この1冊。全集「セリーヌの本」を一応全部読んだ私から言えるのは、セリーヌは『夜の果てへの旅』で十分ですよ、ということくらいでしょうか。十分じゃないよ、という人は全部読めばいいのです。それだけです。それにしても、『なしくずしの死』、クレジット分割払いで死んでいく私たち人間。生きることと労働と、なんとも現代的じゃないですか。
リチャード・ブローティガン『西瓜糖の日々』
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こちらも今年はブローティガンだろうということでひとつ。『アメリカの鱒釣り』と迷ったのですが、なんとなく『西瓜糖』を選びました。なんとなくです。ブローティガンについても、『鱒釣り』と『西瓜糖』でとりあえずオーケーかな、という気はします。しかし、それ以後のジャンルもの挑戦シリーズや詩集も悪くないですよ。
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増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』
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今年一番夢中になってページをめくった本は、間違いなくこれでした。ちょっとでもタイトルが気になった人、べつに気にならない人、なんでもいいですが、これは傑作です。ここまで夢中になれるノンフィクションものというのはなかなかないんじゃないでしょうか。現代の総合格闘技にまで連なる格闘技の歴史、思想。あるいはプロレスというもののあり方、それを取り巻く強烈な個性を持った人々。なにより木村政彦の圧倒的な存在感。おそらくは世間で絶賛されつくした本なのでしょうが、屋上屋を架すことになろうがなんだろうが、これはとてもいい本です。間違いありません。
と、こんなところです。ベスト5とするなら『ディアスポラ』と『椿の海の記』あたりが入りますでしょうか。
では、来年もいい本に巡りあえますよう、などと言いたいところですが、本など読んでいる生活の余裕がますますなくなっていく(そもそも買えてないのですから!)のも目に見えているので、なかなかつらいものがあります。では。