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して、映画『赤い文化住宅の初子』はどうだったのか。よくまとまっていたようには思える。へんに化粧はしていない。たぶん原作にあったドライさがそのままに出ている。たぶんそうじゃないかと思う。たぶん。
ああ、正直にいえばおれは現在貧困から自殺にいたる一歩か二歩手前といったところなのだが、中学、高校あたりとなればプチ・ブルの子だったのだ。中卒で働く、というのはまるで想像できない。いや、想像はできても、実体験としてそのような人を見たことはなかった。なぜっておれは中高一貫の私学に通うボンボンだったからな。
だからこそ、グサリと突き刺さる……わけでもないのが悲しいところ。おれは落ちぶれた貧困。おれには心からあ赤い文化住宅を語る資格もない。そして、その貧困の世界に射す愛の光に涙するわけにもいかない。おれはある作品をそこまで突き放して鑑賞することはできない。おれは黙って白旗をあげて、「おれにはこの映画で描かれている体験を云々する資格はございません」と言うしかない。まあ、それだけのリアリティはあるということか。主人公の兄の少年時代の兄のカープの帽子とメガホンはわざとらしかったがな。
というわけで、父のルーツに広島があり、今、貧困にあるおれにとって、なにかどこかすれ違っちまたな、という作品だった。そして、中高男子校というおれにとっては、少しだけ、ほんの少しだけ射す光が……なんともいえずため息にかわるばかりなのだった。
>゜))彡>゜))彡>゜))彡
- 作者: 松田洋子
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