志村貴子『淡島百景』を読む

淡島百景 1

淡島百景 1

 おれはそうとうに『青い花』が好きだったはずだが、最後の最後までそのテンションを保てなかったところがある。そして今、おれに『青い花』のどこがよかったか、『青い花』の話をしよう、と言われてもあまり話が出てこない。なにもこれは『青い花』に限った話ではなく、漫画、小説、なんに関してもおれはそういうところがある。スコーンと記憶が抜けてしまう。とくに人物がそれなりに多くなってくると怪しい。そういうところがある。
 とはいえ、おれは志村貴子の漫画が好きだ。読んでいる間は没入できるから好きだ。『淡島百景』にしたって、表紙を見続けているだけで飽きないところがある。大げさでなくそういうところがある。とはいえ、この『淡島百景』1巻、少女たちがパラパラっと散りばめられたようで、「登場人物多くなるの?」というところもある。が、まだついていける。そして、また、たまらん。とくに時の流れを描くところなど(『青い花』の巻末おまけ?もそうだっけ?)、これぞ志村貴子という気もする。具体的には伊吹桂子の描かれ方などだ。甘くてキラキラじゃあないんだぜ、というところだ。そこのところがたまらない。ああ、続きが読みたい。恐ろしい、恐ろしい。なにが恐ろしいのかわからないけれど、そう思う。あと、関係ないけど淡島百景って扇千景っぽくね? なんだそれ。おしまい。