志村貴子『こいいじ』1巻、『娘の家出』2巻を読む

 もうすっかり「8週連続刊行!!!志村貴子まつり2015」に踊らされているといっても過言ではないが、踊らなくては損なのだから仕方がない。とはいえ、カネに限りもあるので『どうにかなる日々』の新装版には手を出さないと決めている。

こいいじ(1) (KC KISS)

こいいじ(1) (KC KISS)

 『こいいじ』は三十路になったばかりのヒロインが、年上の幼なじみにずっと片思いしているという話である。意地の話である。して、その相手の男は別の男と……というのはなにかべつの話と混線していて、最愛の人である妻を亡くしたばかりという状態である。娘もいる。おまけにその男が好きだった人である自分の姉までアマゾンから帰ってきた。さてどうなる? どうなるの? 続きが気になる。というか、なんというか、ストレートな志村貴子だ、という感じがした。野球的な意味で。ズバッとね。でもね、なんというか、やっぱりそう単純な状況じゃあないんだよな。相手の男にまるでその気がない。妹、いや、娘のように思われてしまっている。悪くは思われていない。この状況というのは、たぶんよくない。たぶん。あ、おれ、中高男子校だったし、20代30代通して男女問わず友人関係いっさいないから、そのへんの恋愛模様だの結婚の機微だのさっぱりわからんのだった。でも、わからんからこそこの群像劇に、物語に入り込める。そう思おう。 『娘の家出』は2巻。1巻からはますます群像劇っぽくなってきて、いろいろの事情を抱える「娘」たちがいろいろの事情を生きている。いろいろの事情を抱えているのは「娘」たちばかりでなく、#8「燃えろいい女」あたりでは、その人を掘り下げるのか! というような驚きすらある。かつてひきこもりであったおれにとってはひきこもり姉妹あたりも気になるところではある。
 ……と、群像劇だらけだな、志村貴子。収拾はどうつけるんだ? いや、人の人生にはいろいろの事情があって、だれかが死んでもそのいろいろの事情は周りのだれかに引き継がれていくものであって、五劫年先でも同じような人間模様が繰り広げられているに違いないのだが。いや、さすがにそれだけ経ったら人類も人類じゃなくなってるか。まあどうでもよろしい。そして、まあ20歳年上の女性と10年以上続いている、やはり社会からすればイレギュラーなおれとしては、志村貴子ワールドには一参加者のような気持ちで浸って……もいいかな? 男子校時代にゃ男の子に恋したし、なんだってありだ、そうに違いねえ。おしまい。