材料はいいけど馬力が……ハリ・クンズル『民のいない神』を読む

民のいない神 (エクス・リブリス)

民のいない神 (エクス・リブリス)

特異な語りの配列、
視点の切り替え、
時空を行き来する
数多のエピソード、
9.11後の「現実」を描く試み

 と、裏表紙に書いてあった。UFOカルトにウォール街アメリカ先住民に……と、一つの場「ピナクル・ロック」をめぐる物語が展開される。……わけなんだが、なんというか材料は面白くなりそうなのに、なにか退屈。物語をすすめる推進力というか馬力に欠けているという印象。正直、途中で読むのやめてもなんとも思わんだろうな、という感想。
 てな具合に思ったのだが、まあこれがポストなんちゃらの小難しい小説世界なんですよ、と言われたら、「はあ、そうですか」と応えるほかない。あとはなんだろうね、ウォール街で金持ちになったシーク教徒(9.11以降ムスリムと間違えられるなんてのも現実に即しているが)のあたり、おれは金持ちに対して胸糞わるい感情を抱いているので、夫婦仲も子供も悲惨な結果になれと念じつつページをめくったりしていたのだけれど、そのあたりも微妙な結末であって、「うーん」というところ。ただ、まあなんぞ、アメリカというものは人種のるつぼと言われているけれども、溶け合って一つになっていないで、それぞれの具材は具材なんだなーとあ思ったりした。まあ、著者アメリカ人じゃなくて、インド系イギリス人だけど。
 そんでまあ、この著者の他の本を読みたいかというと、やっぱりなんだろうね、おれの未熟な感受性や知識ではあんま牽引力を感じなかったしね、べつに読まんでもいいかってなったね。ただ、タイトルと、本の表紙はよかったよ。おしまい。