心の調子が落ち気味のおれが待ち合わせた女は風邪気味だった。行き先は神奈川県民ホール。
くるりのライブである。新木場だのお台場だのではなく、おれの徒歩圏内に来てくれたというのだから悪くない。
ドリンク500円……というライブハウスではない。おれはそのつもりで喉を乾かして来てしまったので、端っこのほうで売っていたスパークリング・ワインなど飲む。
さて、ライブである。今回はアルバム『アンテナ』再現ライブ、だ。前に行ったライブは「完全再現」ではなかったが、今回はどうなのか。というか、今回のメンバーはどうなっているのか。あらゆる事前情報なしだ。それはおれの心の調子もあるし、『アンテナ』はくるりのなかでも3番目か4番目に好きなアルバムであって、名曲「ロックンロール」が終わってしまったらどうするのだ、というような気もあった。
が、それは杞憂というものだった。今まで見て聴いたなかでも岸田繁のギターが放射するエネルギーの強さというものに圧倒された。もちろん「ロックンロール」は盛り上がった。そして「Hometown」、「花火」と曲順はアルバムを正確になぞっていき……(おれは『アンテナ』こんなアルバムだっけなと思いつつ)……「花の水鉄砲」は好きだな。そして豪腕の外国人ドラムまでギター、アコースティック・ギター(のようなもの)4本に、アコーディオンの「バンドワゴン」。おお、ナイス楽団。ちなみにメンツは向かって左からギターの人、佐藤さん、岸田繁、コーラスの女性2人(やはりこの人たちの手拍子に合わせるのが楽しい)、キーボードの人、だった。というかこのメンツは前と一緒か。ファンファンさんはまだお休み。
でもって、ラストに「How To Go」だ。おれはくるりのメジャーなところを愛する人間なので、このアルバムでいえば「ロックンロール」と「How To Go」に尽きるだろ、というようなところがある。「How To Go」、たまらん。鳴り止まない拍手はやがて波を打つように……って、これはアンコール要求の拍手じゃ。トントン拍子できてたから、この時点で1時間くらい。「これで終わったら怒られるかな」と岸田。「おれが客だったら怒りますよ」と佐藤社長。まだまだ続きます、と。
と、その続きについておれが言えることは少ない。最初に「このころは映画音楽なんてやっていて」とか言ったから、おお、おれのおそらくはくるりでもっとも愛する「ハイウェイ」か! と思ったら、長いインスト。これは劇伴か? そのあとかあとのあとに「ハイウェイ」も演った。おれは生の「ハイウェイ」は初めてだったろうか。骨太なハイウェイ。全体的に骨太。パワフル。豪腕ドラムのせいばかりではあるまい。ともかく、今回はこの編成で、この音で、2004年のアルバムを演る、そして、「あんまりみんな知らん」曲もやる。というか、おれはおれの女より熱心なくるりファンでなく、先に言ったようにくるりのメジャーどころの曲を愛するものであって、「さっきの女の子」とか言われてもわからんのである。わからんが、考えようによっちゃ、全部新曲だ。そんなふうに見ていた。
そして、本当のエンド、そして、本当のアンコール。アンコールの拍手のときにみんな着席して、アンコール始まってから2曲は、曲風もあってか、みんな座って聴いていた。なにか不思議な感じだ。だが、座って聴くというのもそれはそれで悪くない。
でもって最後の曲だ。新曲だ。これが想像を超える代物だった。まだこんな引き出しが、というか、タンスを作ってくるか、という。
琥珀色の街、上海蟹の朝(初回限定盤・CD+Bonus CD)
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いやはや、堪能の2時間と15分くらいでございました。
そしておれは日常に帰っていく。
めったに買わないTシャツなんて買っちゃって、金もないのに。
ああ、そうだ、くつ下は早々に売り切れていたので、最終日の物販で「くつ下欲しいなあ」と思っている人は早めに並ぶべきだろう。
それじゃあ。
では。
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