『永沢君』のさくらももこと、西原理恵子について

 

永沢君 (IKKI COMIX)

永沢君 (IKKI COMIX)

 

ひょんなことから「漫画『永沢君』における城ヶ崎さん」の話(変態的、倒錯的である)を知り、たいへん面白く思い、そういえばさくらももこも随分読んでいなかったな、などと思い、気づいたらKindleでポチッ。危ない時代である。

危ないといえばさくらももこである。この『永沢君』のゾクゾクするような人間の闇というか、ダメ人間の有り様というか、小さく、それゆえに鋭い醜さというか、そういうものをこの絵柄で描き出している。えげつない。

そんなえげつないさくらももこ。小学生時代など、唯一、男が読んでもバカにされない「少女漫画」だった。おれの通っていた片田舎の小学校はやけに男と女の区分けが強く、男と女があそんだり(男子、女子と書かないのは、そういう言葉遣いがなかった記憶による)するなんてもってのほかだった。だからおれは、たとえば『セーラームーン』などもよくしらないのである。が、さくらももこは別だった。老若男女に好まれる、国民的作品。アニメだって、もう何年になるのだろうか。平成のサザエさん? 

が、しかし、その世界観を作ったさくらももこの闇というものよ。たしか本人は『ガロ』系が好み(「花輪くん」など)だとかいう話もあったし、『ちびまる子ちゃん』にも闇はある。それを背負わされていたのがひとつに永沢君だった。永沢君だけ抽出したら、ここまでえげつなくなる。

と、ここで西原理恵子の名前を出す。おれは『近代麻雀』連載時からの西原理恵子ファンである。西原はたびたびさくらももこ的ポジションに上り詰めてやる、みたいな感じでさくらももこ敵視ネタをやってきた。プロレス的におもしろいネタ……だった。が、今やどうだろう、今、西原理恵子が上り詰めてしまったポジションは、下手すればちょっと一線を退いている感もあるさくらももこ以上かもしれない。まあ、『毎日かあさん』とて『ちびまる子ちゃん』にはかなわないものの。

で、ふと思ったのである。西原理恵子の下品さや、人間社会の底の方をリアルにえげつなく描き出す作風、人間の醜さや弱さを描いてしまう作風。これとさくらももこの闇というか悪意との相違とはなんだろうか。

とか考えていると、結局のところ最終的なところで、西原理恵子の方がポジティブだし、よほど優しい世界を描く。さくらももこの「救いようのなさ」とは違った方向にある。そのあたり、サイバラ自身が見抜いていて、さくらももこめ、という感じになっているのではないか。あるいは、同じ人間の闇を描くものとして、なぜかさくらももこは国民的作品の作者になっているというあたりがあるのではないか。わかりはしないが、さくらももこ西原理恵子というマッチアップにはどこか面白そうなところがある。画力対決でもなんでもいいが、なんか絡みがあっても面白いような気がするのだが。

しかし、これだけ人間の暗いところを描く人間、さくらももこの作品が、国民的な安心安全アニメとして放送され続けている国、日本。悪くないと思うぜ。

 

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 結局、ちびまる子ちゃん本編がどうなったのかよくわかってないおれ。

 

 

 アニメも観てないし、映画も……。