
- 作者: 上原善広
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/10/16
- メディア: 新書
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というわけで、やはり著者出身の「路地」のあぶらかすの話などからはじまる。こないだSMAP解散騒動でスーパー玉出の広告が目立っていたと話題になっていた。その一連のまとめツイートで、「あぶらかす」の商品名が「まいどありがとうございます」になっていたのを見た。おれはスーパー玉出をまったく知らないが、おそらくは誤植などではなくある種の配慮のようなものだろうとは思う。そういったソウル・フードの話である。
ソウル・フード。もちろん、その民族、人種の中で受け継がれてきたものもある。本書ではアイヌが採り上げられている。そして、おれが名前すら知らなかったウィルタとニブフという民の存在と、その食も紹介されている。そしてまた、ソテツやウミヘビを食したという沖縄の離島の話も出てくる。おれには北海道も沖縄も遠すぎて(金がかかりすぎて)行くことはもう一生ないだろうが、それぞれその土地に根ざした食べ物がある。あるといっても、やがては消滅してしまうかもしれない。本書はその貴重な記録になるかもしれない。残念な話ではある。
また、ソウル・フードといっても、いくつかの文化が混じりあったものもある。焼肉やホルモン、もつ煮などは、在日朝鮮人が持ち込んできたものという話もあるが、「路地」ではその普及前から食されてきたものであり、そのあたりに混合があるのではないか、ということだ。このあたりも「被差別」のキーワードが繋ぐ文化というものかもしれない。
もつ煮……というと、おれにとっては「オヤジギャル」という言葉が流行ったころに初めて目にした言葉だった。「オヤジギャル」は「もつ煮」を食う。もつとは何か? おれが地方競馬場に行くようになるまで知ることはなかった。今ではスーパーでも気軽に買える。それ以前のことは知らないが。
いずれにせよ、こういう形で食の文化が残るのは悪くないことだろう。消えてしまっては、文字のみのものとなってしまっては、やはりもったいないものである。ある食べ物が背負ってきた背景、そういうもの込みで食う。きれいごとを言っているのかもしれないが、なにかを食って生きる以上、そういうことだって「込み」じゃないと腑に落ちないってこともあるだろう。
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- 作者: 上原善広
- 出版社/メーカー: 新潮社
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