邦画も悪くねえだろ―園子温『新宿スワン』

新宿スワン

新宿スワン

 おれが好きな映画監督を幾人か挙げよと言われたら、園子温の名前は絶対に入ってくる。その園子温の『新宿スワン』である。これがたいへんよかったのである。園子温作品をぜーんぶ観てきたわけじゃねえし(だったら今頃『新宿スワン』もねえだろう)、作風もいろいろで、全部大好きっちゅーわけじゃねえけど、やっぱりやってくれるぜって感じだった。
 やってくれるぜ、といっても、なんかこう、作家性(?)のようなものに突き抜けてるんじゃなくて、ぼくたちの好きなヤンキー・ヤクザ漫画の実写版をがっしりと作ってくれたなあ、という感じだ。男の子ならだれでも……とは言わないけど、おれはヤンキー漫画、ヤクザ漫画が嫌いじゃない。そのおれが観て、この映画はその手の空気がビンビンに漂っていて、ええなあと思ったのである。ちなみに原作は未読である。
 登場人物、というか、役者も良かった。綾野剛といえば松平容保? とかいうおれにしても、このはっちゃっけっぷりはすげえと思ったし、「ウシジマくん」じゃあないの? という山田孝之にしてもいい感じだし、パーフェクト超人みたいに見える伊勢谷友介もその存在感をばっちり醸し出している(そういえばこの映画の事前情報といえば、浜松でのロケで伊勢谷さんギャラリーに憤る、くらいだった)。そのうえ、さらに脇を固めるキャストもなんかビシっと当てはまってて(原作既読組にとってはどうか知らないが)、関さんなんかもうスゲェいいのな(『真田丸』の福島正則だってよ)。
 つーわけで、なんかこう、邦画にパワーねえよ、おもしろくねえよ、とか思っていたら、このあたり一本いかがですか? という感じがした。悪い言い方に思われたらやや不本意だが「普通におもしれえからよ」というところだ。そして、東京とはおそろしいところだと改めて思った。おしまい。