石を投げる

今週のお題「何して遊んだ?」

なにがきっかけでそれが始まったかは覚えていない。ただ、2つの集団に分かれて、石を投げあった。あれはなんだったのだろう。いまでもそう思う。ともかく、ちょっと年長のものから年下のものまでいる2つのグループにわかれて石を投げあった。べつに喧嘩じゃない。遊びだった。どこにも恨みや怒り、対立はなかった。地区の揉め事でもなかった。小学生たちの集団。ともかく石を投げあった。泥団子とかじゃない、ちゃんとした石だ。石だった。当たれば血も出るだろう石だった。それをびゅんびゅん投げあった。草むらのなかを姿勢低くして走った。見当をつけて石を投げた。意味がわからない。意味はわからないが、その緊張感に酔いしれた。みな、酔いしれた。ソフトエアーガンで撃ち合うより危険。当たれば血が出る石を投げた。投げ返された。幸いにしてだれも怪我しなかった。とはいえ、みなが手加減したわけでもなかった。あれは本当の石の投げ合いだった。投げ合って、遊んでいた。原始人の遊び、なのかもしれなかった。あのときの自分たちは、ファミコンなんかよりずっとずっと昔の遊びに夢中になっていた。人間の本能みたいなものにとりつかれていた。そんな風に思う。そして、その遊びは二度と行われなかった。なぜ石を投げ始めたのかわからなかったが、すごいスリルがあった。けれど、二度と行うべきものでもなかった。理性が勝った、といえるのだろうか。よくわからない。ただ。ときどきおれはあの石の投げ合いを思いだす。なんの工夫もルールもない、石の投げ合い。本当に本当に夢中になって遊んだ思い出。それとも、あれは遊びではなかったのかもしれない。よくわからないなにか。それでもときどき思い出す。ほかのどんな遊びよりも思い出す。おれは石を投げる。おれは石を投げられる。あれは、なんだったんだろう?