鉛様麻痺と父の思い出

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ここ二日連続で朝ベッドから出られなくて午前休にした。いわゆる鉛様麻痺(なまりようまひ)というものだと思う。非定型うつの症状として検索結果に出てくるから、ひょっとしたら違うかもしれない。ただ、症状はともかく身体が動かない。笑っちゃうくらいに動かない。なにを言ってるのかよくわからないのだろうが、目を覚まそうと顔をこするとか、寝返りをうつとか、もちろん起き上がることだってできなくなる。

頭ははっきりしている。動かなきゃいけないとわかっている。わかっているが、身体が動かない。金縛りのようなこわばりはない。力が入らない。脳からの指示を伝える線が切れたような感じ。糸を来られた操り人形みたい。それでもなんとか、必死の必死で枕元のiPhoneで会社に連絡する。そしてまたじっとする。じっとしているしかない。トイレに行きたくなっても、本当の本当の限界まで頭で「起き上がってトイレに行かなくては」と思って、ようやく起きることができたりする。それきっかけで思い切って服を脱いでシャワーを浴びて……座り込んでしまって、また動けなくなったりする。お湯の無駄だ。時間の無駄だ。人生の無駄だ。

こんなおれをおれが見て思い出すのはおれの父親のことだ。父はある日からか、間歇的にかわからないが、会社にいけなくなった。大事な会議が合ったりして、前日まで行く準備をしていても、いざ当日になると寝込んでしまったりして、いろいろの人に迷惑をかけたことと思う。当時は今ほど精神疾患がブーム(?)ではなかったけれど、なにか精神を患っているようにしか思えなかった。ただ、酒も飲んでいたので、糖尿病を悪くした自業自得のようにも見えた。

今思えば、やはり引きずってでも病院に連れて行くべきだったのだろう。ただ、異様に高いプライドによって、たいていの医者とうまくいかなくなる。薬も飲まなくなる、そういう人間だった。

違いは、そのくらいだろう、と思う。おれは医師の言うことにはだいたい逆らわないし、薬というものによって脳の組成が改変されることに喜びすら感じている。

が、結局のところ酒はやめられないし、ご覧のように布団の中で鉛になっている。ひょっとすると、父も鉛になっていたのではないだろうか。こういった病気がどのていど遺伝によるものかはわからないが、なにか関連性があってもおかしくはないだろう。父の生き方を見ていると双極性障害I型のようにも見えるが、そこからII型の人間が出てくることもあるのだろうか。

いずれにせよ、おれはあの当時から父を許してはいないし、今後理解を示すこともないだろう。そしてきっとおれもだれかに許されないのだろうし、理解されないのだろう。人間は孤独だ。そしてきっと鉛でできている。